Hello, FileMaker! 開発者必携の機能たち

グラフ機能と比較すると多少地味な感じがいなめないが、ほかに追加されている機能も強力なものばかり。まだこれらの機能を使っていないFileMakerデベロッパは要チェックだ。

  • インスペクタ
  • オブジェクトバッジ
  • ポータルフィルタリング

インスペクタでオブジェクトに指定した位置/外観/データ設定を一目で確認

レイアウトモードで表示される「インスペクタ」は、これまでのオブジェクト情報や各種設定項目をひとまとめにしたツールバー。情報の確認だけでなく、実際に編集や設定をおこなうことが可能だ。

表示・操作できるプロパティは次のとおり。

位置

  • 位置 (旧バージョン「オブジェクト情報」に相当)
  • 自動サイズ調節
  • 配置と整列 (オブジェクトのコンテキストメニュー「配置」に相当)
  • スライドと表示 (旧バージョンの書式メニュー > 「スライド/印刷設定」に相当)

外観

  • オブジェクト (オブジェクトのコンテキストメニュー各種スタイル、および「ポップアップヘルプ設定」に相当)
  • テキスト (旧バージョンのオブジェクトのコンテキストメニュー「文字の書式」に相当)
  • 段落設定 (旧バージョンのオブジェクトのコンテキストメニュー「文字の書式 > 段落設定」)
  • タブ設定 (タブオブジェクトのコンテキストメニュー「タブコントロール設定」に相当)

データ設定

  • フィールド (旧バージョンのフィールドオブジェクトのコンテキストメニュー「フィールド/コントロールの設定」に相当)
  • 動作 (旧バージョンのフィールドオブジェクトのコンテキストメニュー「フィールド/コントロールの動作」に相当)
  • データの書式設定 (旧バージョンのオブジェクトのコンテキストメニュー「数字書式」「日付書式」「時刻書式」に相当)

インスペクタ「位置」では、"位置", "自動サイズ調節", "配置の整列", "スライドと表示"の設定値を確認・編集できる

インスペクタ「外観」では、"オブジェクト", "テキスト", "段落設定", "スライドと表示"の設定値を確認・編集できる

インスペクタ「データ」では、"フィールド", "動作", "データの書式設定"の設定値を確認・編集できる

各プロパティは折りたたむことができ、確認したい情報だけを表示することも可能。また表示メニューから「新規インスペクタ」を選択することで、複数のインスペクタを表示できる。この機能追加の影響か、オブジェクトのコンテキストメニューやダブルクリック時の操作が以前のバージョンと異なっている。FileMaker Pro 9-10を使ってきたユーザ/デベロッパは慣れるまでに多少時間がかかりそうだ。

オブジェクトバッジ

各オブジェクトに「条件付き書式」「スクリプトトリガ」「クイック検索」「ポップアップヘルプ」が設定されている場合は、レイアウトモード上でオブジェクト右下にバッジとして表示されるようになった。どこに何が設定されているかを確認するために、各オブジェクトを右クリックしてメニューを選んで..というわずらわしい作業をおこなう必要もない。

それぞれのバッジの意味については次のとおり。

  • : 条件付き書式が設定されている
  • : スクリプトトリガが設定されている
  • : クイック検索の対象
  • : クイック検索の対象だが、索引が作成できないフィールド
  • : ポップアップヘルプが設定されている

これらオブジェクトバッジは、表示メニューより4バッジの表示/非表示をカスタマイズできる。自分の好みに合わせて切りかえよう。

表示 > オブジェクトより、バッジの表示/非表示を選択できる。クイック検索などを使用しない場合は、ここで消してしまおう

ポータルフィルタリング

ポータルのオプションに「ポータルレコードのフィルタ」が追加された。ポータルは関連テーブルのレコードを機能。

これまでポータル内に表示するレコードを絞り込むには、リレーショナルシップで絞り込み用のリレーションを作成する必要があった。条件が増えれば増えるほど、リレーションのキーフィールドや条件が増え、テーブルオカレンスが増えていく。複雑になったリレーションは保守性を落とし、不具合が発生した際の切り分けを難しくしてしまう。

今回追加されたポータルフィルタリングでは、配置したポータル自体に「レコードを表示する条件式」を埋め込んで使用する。リレーションシップで使用する演算子と違い、各種スクリプトステップや計算フィールドで使用する「計算式」となるため、使い勝手が良い。

ポータルのオプションに「ポータルレコードのフィルタ」が追加されている

ポータルフィルタリングで使用するのは、計算フィールドや各種スクリプトステップで使用するときとおなじ計算式。各種関数やコピペができる点も嬉しいところだ

ポータルに表示するレコードのサンプル。経費明細を想定

ポータルを3つ配置。上から順に「フィルタリング設定なし」「科目が交通費であること」「科目が消耗品費かつ、金額が10000を越える」の設定をおこなっている

FileMaker Pro 11ではデータベースの根幹部分には改良が加えられなかったのか、ソートや計算/集計フィールドの処理時間に改善は見られなかった。取り扱うデータやユーザ数が大規模なアプリケーションの構築には、正直なところまだまだ不安が残る点がある。しかしながら、小~中規模のアプリケーション実装や既存システムの解析においては、これらの新機能が開発の手助けになることは明らかだろう。適切な場面において、これらの機能を使いこなせるのとそうでないとでは、開発効率に大幅に差がでる。まだ11にアップデートしていないユーザやFileMakerデベロッパは、これを機に導入を検討してみてほしい。

なお、マイコミジャーナルでは今年も「ファイルメーカー選手権」を開催している。腕に覚えのあるFileMakerデベロッパは新機能をフルに活用して、オリジナリティあふれる作品を応募してみてはいかがだろうか。

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