シャープは8月18日、60V型のタッチパネル一体型インフォメーションディスプレイを発表した。同製品は、黒板に書き込むように、専用のペンを用いて簡単に画面へ書き込みを行うことができる。デジタル複合機との連携機能を用いれば、デジタルサイネージのコンテンツも簡単に作ることが可能だ。今回、同製品を実際に触れるチャンスがあったので、その様子をお届けしよう。

シャープ ビジネスソリューション事業本部 ビジネスソリューション機器事業部 商品企画部部長の平野芳樹氏

初めに、ビジネスソリューション事業本部 ビジネスソリューション機器事業部 商品企画部部長の平野芳樹氏が同製品について説明した。

同氏は、同製品がターゲットとする31インチ以上のタッチパネル市場として、「教育」「オフィス」「デジタルサイネージ」を挙げた。政府が昨年度に学校ICTのための予算として4,000億円超を配分したことから、「電子黒板」が急速に普及しているが、同社としては今までにない新たな使い方を提案していくという。

同製品の技術的な特徴としては、「LEDバックライトの採用」「自社開発の赤外線遮断検出方式を採用」「液晶ディスプレイとタッチパネルの一体化」がある。

従来の方式は1つの赤外線LEDの光を1つの赤外線センサーで受光する。これに対し、今回採用された赤外線遮断検出方式は1つの赤外線を複数のセンサーで受光するため、画面上でタッチした部分のより細かな座標を検出することが可能だ。

赤外線遮断検出方式の仕組み

さらに、同製品は液晶ディスプレイとタッチパネルが一体となった設計が行われている。これまでは、液晶ディスプレイの上にタッチパネルを被せるタイプだったが、一体化にすることで視差が軽減されるともに、タッチ操作のズレも解消する。

実際にタッチ操作をさせてもらったが、ヨコにずらせば画面が送られ、タップすると画面が拡大されるなど、マルチタッチのスマートフォンを操作するのと同じ感覚で行えた。画面の拡大は2段階まで可能だ。

会場には一体型ではないディスプレイも置かれていたが、同製品と比べると画面の映りが若干劣るように感じた。

この赤外線遮断検出方式と液晶ディスプレイとタッチパネルの一体化が、スムーズな手書き入力をもたらしている。同氏は説明を行いながら、画面上に文字を書いていったが、その表示は非常に滑らかだった。

手書きの際に用いる専用タッチペンは「黒色」「赤色」「青色」の3色が使えるほか、消しゴムとしても使える。ペンの色は画面上のアイコンに加え、ペン上の手元のボタンで色を変更したり、消しゴムに切り替えたりできる。

画面で文字を書きながら説明をしている時にペンの色を変更したくなった場合、画面を横切って色を変更すると、場が中断してしまう。しかし、手元でササっと色を変更できれば、流れを途切れさせることなく、説明が続けられる。ペンは画面に対する接触に反応しているので、実は手で文字を書くことも可能だ。

そのほか、デジタル複合機と連携できるのも同製品のメリットだ。デモでは、設計図をMFPから取り込んで画面上に表示し、画面に書き込みを行ってから保存するという例が示された。保存したデータは印刷のほか、メールで添付して送ることにも対応している。

同製品なら、不動産の店舗に来社したお客とディスプレイを見てデータを書き込みながら話し合いを行い、帰る際は最終的な内容を印刷して持ち帰ってもらうなんてことも可能だ。

左はMFPから取り込んだ設計図にペンで書き込みを行った画面で、右は書き込んだデータの印刷物。店頭でボードを使って説明を受けても、その内容が書き込まれたデータを印刷して持って帰ることができる

このMFPからのデータの取り込みは簡単なデジタルサイネージのコンテンツ作成にも使える。例えばスーパーだったら、その日のチラシをMFPから取り込んで、お買い得商品が目立つようにペンで強調すればよい。この程度の操作なら、ITに特別詳しくない人でも簡単にできるはずだ。

同氏は「デジタルサイネージのコンテンツの作成は大変で、困っている方も少なくないと聞いています。しかし、このMFPとの連携機能と手書き機能を使ってもらえば、簡単にデジタルサイネージ用のコンテンツを作ることができます」と話す。

現在のところ、同社製MFPの連携のみ動作検証を行っているとのことだが、技術的には他社製品との連携は可能なので、今後は検証を進めていくそうだ。

MFPからチラシを取り込んだデータに書き込みを行えば"お手軽デジタルサイネージ"の出来上がりだ

オフィスとデジタルサイネージの用途を紹介したが、同製品の真価は教育現場において最も発揮されるのかもしれない。プロジェクターに対して画面が明るい同製品の良さについて、「まず、ノートがとりやすいというメリットがあります。また、部屋を暗くする必要がないので、発言者は参加者の顔を見ながら話をすることができます」と、同氏は説明する。

コンテンツの面でも、同社の学校教育用グループウェア「スタディノート」と組み合わせることで、インタラクティブな授業が実現される。デモでは、内容を補足するウインドウが隠れているポイントをペンでタッチすると、新たなウインドウがポップアップし、ペンで重要なことを示すといった様子が示された。

なお、黒板消しと似た形状のイレーザーも付属している。イレーザーはタッチされている面積を認識して、消しゴム機能と連携する。「できるだけ現在の環境を忠実に再現することで、使い勝手をよくしました」と同氏。このきめ細やかな機能は日本メーカーならではの技だろう。

学校教育用グループウェア「スタディノート」を表示した画面。ペンで重要な内容を書き込むことで、説明にメリハリをつけることができる

最近、電子黒板という言葉を耳にする機会は増えていたが、実際にその機能を目にしたのは今回が初めてだった。学校の授業において、カラーの大きな画面上に内容に応じて画面が表示されるといった場面があれば、楽しく勉強が進められるのではないかと思った。

ただ、同氏が「電子黒板とは呼びたくない」というように、同製品の可能性は学校現場にとどまらない。デモで見せてもらったように、オフィスでもさまざまな用途が考えられる。また、簡単にコンテンツが作れてその時々に合わせた内容が書き込めるという点も、日替わり商品などで客を呼び込みたいスーパーなどで引きが強いのではないだろうか。

こうしたタッチ技術に優れているシャープだが、そろそろ電子書籍端末が登場する頃であり、そちらのほうも楽しみだ。