Firefox web browser - Faster, more secure & customizable

かなり前の話になるが、Firefox Developers Conference 2009に参加するためにMozilla LabsのAza Raskin氏と、Mozilla CorporatoinのエバンジェリストChristopher Bilzzard氏が来日した。両氏からFirefoxでホットなトピックを語ってもらったらが、このときに特にアドオンへの取り組みの強さを感じた。Firefox 4ではアドオンの仕組みがかわろうとしている。この機会に、当時両者が語った内容を取り上げて紹介しておきたい。

アドオンデベロッパ、ユーザ、双方が利点を見出せるものへ

頻繁にAdd-ons for Firefoxを訪れるユーザはもう気がついているかもしれないが、しばらく前からアドオンによっては「Contribute」というボタンが表示されるようになった。これはアドオン開発者へPayPal経由で募金を実施するためのものだ。

Firefoxユーザにとってアドオンの存在はきわめて重要なものになっている。しかし、アドオンを作っているのも人間だ。なかにはかなりの時間と労力をかけて開発されているアドオンもある。できればこのアドオンから収益を得られる仕組みを確立することで、アドオンの開発そのものにエコシステムを構築していきたいというのがMozillaの狙いだ。

ボタンにハートマークがついているのは、あくまでもこのアドオンの開発を支援したいと考えるユーザが、自分の意思で寄付を行うという意味を強調するためだとされている。現在のところこの寄付を実施すると、PayPal経由で開発者へ資金提供が実施される。

すでに人気の高いアドオンにはそれなりの支援金が集まっているそうだが、ここで注目されるのはApple App Storeで提供されるアプリケーションの相場と比較して、Firefoxアドオンに設定されてる金額が高いということだ。App Storeで提供されるアプリケーションでもっとも多い金額は99セントだとみられている。アプリケーションの開発の費用は、この販売価格ではペイしないとみるソフトウェアベンダやデベロッパは少なくない。Add-ons for Firefoxではそれよりも高い金額で推移しており、App Storeの購買層とAdd-ons for Firefoxの寄付層は価値の見い出し方に違いがあるようだ。

アドオン互換性の向上に、ユーザの力を

Firefox最大の魅力であるアドオンだが、Firefoxのバージョンアップを阻害する最大の要因にもなっている。アドオンの開発者は新しいバージョンのFirefoxがリリースされるまで、そのバージョンへの対応チェックをおこなわない傾向にある。このため、アドオンが動作するようになるまでFirefoxのバージョンアップを控えるユーザがでてくるというわけだ。

Mozillaは、開発者にバージョンチェックを促すとともに、具体的にユーザからアドオン開発者へ動作の有無を通知する仕組みとしてAdd-on Compatibility Reporterを提供している。ユーザが簡単に動作チェックを報告できるようにすることで、開発者への対応を促そうというものだ。

昨年の話になるが、Aza Raskin氏とChristopher Bilzzard氏の両者に話を聞いた段階ではAdd-on Compatibility Reporterは11,000ほどのダウンロードがあり、実際に3,000を超える利用があったという。最初はFirefox 3.6に対応したアドオンの割合も35%だったが、その段階で45%ほどになっていたということだった。

Firefox流のやり方、世界中のユーザの力を集めるという方法

Chromeの勢いは目をみはるものがある。開発スタイルもオープンソースソフトウェアの活用方法もうまい。企業としてのアプローチとOSSとしてのアプローチのいいところを抑えて、ブラウザの進歩の速度も早い。Safariを開発しているAppleも、IEを開発しているMicrosoftも、実際に開発に関与するデベロッパの数は限られているかもしれないが、開発に投資できる資金力はMozillaよりもあるとみていいようだ。

それと比較して、Mozilla FoundationやMozilla Corporationという組織はあるものの、Firefoxの開発はユーザに委ねられている。GoogleやMicrosoftのような開発アプローチは資金力的にも実現できないのが現状だ。こうしたなか、アドオン開発の促進、Add-on Compatibility Reporterの提供、世界中から試験や調査への参加を実現するTest Pilotの実施などは、Firefox流の取り組みとして興味深いものがある。世界中のユーザの力を集めて開発を進めるというのが、Firefoxのやり方だ。