Melodeoが展開する音楽サービス「nuTsie」

米Hewlett-Packard (HP)がクラウド経由で音楽サービスを提供する米Melodeoを買収した。同件は6月23日(現地時間)に米TechCrunchが関係者の話を元にスクープしたもので、買収総額は3,000~3,500万ドル程度になるという。Melodeoと聞いてもピンとこないが、同社は「nuTsie」というブランドでサービスを展開しており、ちょうどPandoraや、Appleが買収したLalaの競合にあたるサービスとなる。

TechCrunchによれば、nuTsieとは「iTunes」のアナグラムにあたり、iTunesの存在を非常に意識したサービスだという。BlackBerry、Android、Windows Mobileの各端末に対応しており、ユーザーのiTunesプレイリストをスキャンして、これら楽曲を各モバイルデバイスで再生可能にする。このほかにも、さまざまなジャンルのプレイリストがプリセットで用意されており、そうした膨大な楽曲ライブラリからテーマに沿った曲たちを楽しむ仕組みを提供するサービスだといえる。

問題なのは、この買収の意味するところだ。これまでエンタープライズ寄りの事業強化を続けてきた最近のHPにとって、コンシューマ向けサービスを買収するのは非常に珍しい。だが今年4月に米Palmを12億ドルで買収したことを考えれば、その動きの延長線上にあるものが少し見えてくる。同社はPalm買収でPalm Preといったスマートフォン製品を獲得したが、同時にそのベースとなっているwebOSという製品も手に入れている。Linuxベースの組み込み向けOSだが、同社CEOのMark Hurd氏はwebOSの自社製プリンタやタブレットなど幅広い製品への展開を計画していると述べており、今後AppleのiOSのように「さまざまな種類のデバイスで共通のOS環境」を構築しようとしている。HPでは今回買収したMelodeoのクラウド配信技術に着目しているというが、スマートフォンを含む幅広いデバイスへの音楽(あるいはそれに準じたコンテンツ配信)サービス展開を計画しているのかもしれない。

折しも、この買収が明らかになった2日前には、Googleの音楽ダウンロードサービス計画が話題となった。このGoogleのライバルはiTunes Storeや、先日サービスを閉鎖したLalaになるとみられており、もしHPがこの分野に本格参入してくるのであれば、次世代配信サービスを巡った新たな戦いが勃発することになるだろう。