富士通とデジタルプロセスは6月15日、携帯電話や複写機などの精密機器メーカーなどを主なターゲットとした3次元仮想検証シミュレーター「VPS(Virtual Product Simulator)」の最新版となる「V15L10」を8月末より販売開始すると発表した。
「VPS」は携帯電話や複写機など、主として1,000個以上の部品点数を要する大規模組立製造における生産準備支援を行うためのソフトウェアであり、製品の設計から組立順序の検討、検証、伝達、工程分割、作業ドキュメントの作成など、通常の3次元CADソフトでは扱えない領域までを広範にカバーすることが特徴とされている。実機による検証が不要になることなどによって、製品開発期間の大幅な短縮を可能にする。
「V15L10」では、従来バージョンよりも表示性能(レスポンス)が約10倍向上しているとされ、断面表示や回転操作などがよりスムーズになっている。これに伴い、組立手順の検討やアニメーション作成といった作業を効率化でき、「ユーザーのQCD(品質・コスト・納期)改善に貢献する」(同社)という。
また同社は、実機が不要になることで「物の消費」「人の移動」「作業スペース」といった要素を削減できることから、結果としてCO2排出量の大幅な削減につながるなど、VPSによる環境面での効果についても強調した。
VPSはいくつかのコンポーネントで構成される製品となっているが、今回発表されたのは製品フローや組立性能評価、工程検討といった役割を担う「Manufacturing」(1ライセンスあたり400万円)と、組立/分解、機構シミュレーション、動的干渉チェック、人体モデル、工具モデル、アニメーション作成などの役割を担う「Digital Mockup(基本モジュール)」(同250万円)の2製品(価格はいずれも税別)。
「Manufacturing」は工程分野別の工数算出のほか、人的リソース(の作業負荷の状況)を考慮したラインバランスの調整にも対応する。製品発表に際して開催された記者説明会でデジタルプロセスの山田氏は「VPSによって組立製造業に価値を提供し、日本の"モノづくり"を強くしたい」と語った。
なお、「VPS」は日本国内の複写機メーカーと携帯電話メーカーのほとどんどで採用されているとのことだが、今後3年間における販売目標は5,000ライセンスとなっている。