日本国内でも、待望の発売開始から2週間が経過したAppleのタブレット型端末「iPad」。話題の本製品を早速導入し、自身の創作活動やライフスタイルに積極的に取り入れているクリエイターも多いことだろう。また、つい先日さらに高機能となった最新機種「iPhone 4」も発表され、まさに嬉しい悲鳴といったところだ。どちらも大変魅力的なデバイスなだけに、「どちらが自分のクリエイションに合っているか?」、「どのように使い分けるか?」など、非常に悩ましい。そこで今回は、いくつかクリエイション用のiPad/iPhoneアプリを比較しながら、その用途や魅力について紹介していこう。
グラフィック部門
まずは、iPadの登場により劇的に進化を遂げたグラフィック部門。iPadの大画面のアドバンテージが如実に表れるジャンルであり、魅力的なアプリも多い。Autodeskのペイント&ドローイングアプリ「SketchBook Mobile」(iPhoneアプリ)および「SketchBook Pro」(iPadアプリ)は、同名のデスクトップPC版アプリと同等のペイントエンジンを採用し、指先で書いたとは思えない程のハイクオリティーな作画が可能となっている。基本的な描画やレイヤーなどの機能は、両アプリともにほぼ同等なものの、一目でわかるペイント領域の違いはもちろん、プリセットブラシの増加、レイヤー付きPSDファイルのエクスポートなど、iPad版では、本格的な制作が行えるようブラッシュアップが行われている。これらのことから、常に持ち歩きながらサッと取り出して浮かんだアイデアをメモするなどの用途にはiPhone版がオススメだが、アイディアを展開して、さらに作品としての完成度を高めたいならiPad版が最適だろう。
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アプリには、iPhone/iPod touchに対応したもの、iPadのみに対応したもの、さらにその両方に同時にネイティブ対応したアプリ(AppStoreでは「+」アイコンが表示)のものがある。なお、iPhone/iPod touch対応アプリも、iPadで×2モード表示することで問題なく利用できる場合が多い |
SketchBook Mobile(iPhoneアプリ) |
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必要な時だけ表示される仕組みで、フルスクリーンのワーク スペースを確保し、iPhoneでも快適な作業環境を実現。食事中に浮かんだアイデアをナプキンに書き留めるような手軽さが嬉しい |
SketchBook Pro(iPadアプリ) |
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iPadならではの大画面&マルチタッチを活かしたユーザーインタフェースが魅力。ラフスケッチだけでなく複雑な表現や細かい作業も行えるプロフェッシナル仕様の各種機能が搭載されている |
ミュージック部門
続いては、iPadの登場とともに大きく盛り上がりを見せたミュージック部門。次々と楽器や作曲ツールなどのアプリがリリースされており、音楽制作シーンにおいてもiPhone/iPadの存在感は増すばかりだ。このジャンルの中で、特に注目したいのが「iSequence」(iPhoneアプリ)および「iSequence for iPad」(iPadアプリ)。iPhone版アプリには、110種のサウンド、5トラック、5オクターブ、最大999パターンなど充実の機能が備えられており、DAWソフトのような感覚で多彩な音色と直感的なシーケンス機能などを駆使して手軽に十分な曲作りを行える。とはいえ、単体で曲を完全に作り上げるにはやや機能不足な面があったのもまた事実。しかし、iPad版であればさらに追加されたトラックや音色、演奏しやすいキーボード、強力なDSPエフェクトを備えたフレキシブルなミキサーなどを使って、ほぼすべての作業をアプリ内だけで高次元に完結することも可能となっている(Youtube動画参照)。瞬発力の必要なモバイルの制作環境にはiPhoneで、スタジオでの音源制作やライブパフォーマンスにはiPadが活躍してくれるだろう。
iSequence |
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作曲・編集、ミックスなどの一連の作業を素早く行うことができる。電車や車などでの移動中にも、手軽に作曲アイディアのメモやデモ曲の作成を行えるは非常に便利。作成したデータはWi-Fiで出力可能 |
iSequence for iPad |
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iPadならではの視認性と操作性に優れたユーザーインタフェースを活用し、快適なレコーディング/ミキシング作業が行える。楽器やPCソフトのコントローラーとしての可能性にも大いに期待したい |
このように、iPhone/iPadアプリは、単なる付加的機能の追加のみならず、画面サイズに合わせた独自のユーザーインタフェース・デザインを用意するなど、それぞれのデバイスの特徴を活かしたものとなっている。iPhone/iPadを、自分の制作環境やニーズに合わせて選択し上手に使い分けることで、クリエイションツールとしての魅力もさらにアップすること間違いなしだ。