売上高10兆5,000億円を目指す中期経営計画

日立製作所は5月31日、2010年度(2010年4月~)から2012年度(~2013年3月)までの3カ年の事業方針を定めた中期経営計画「2012 中期経営計画」を発表。同計画に基づき、最終年度となる2012年度には売上高10兆5,000億円、営業利益5%超を実現し、当期純利益として安定的に2,000億円台を確保していく目標が示された。

3カ年計画の最終年度となる2012年度の経営目標

日立製作所 代表執行役 執行役社長の中西宏明氏

同計画の策定よる同社の方針について、同社代表執行役 執行役社長の中西宏明氏は、「日立製作所は2010年度に創業100周年を迎えるが、市場も徐々に回復傾向にあり、この機にこれまでの守りの経営から攻めの経営にシフトし、"社会イノベーション事業"を核とした"安定的経営基盤"を持つ企業への変貌を目指す」と語る。

同計画を進めていく上で重要となるのが、「社会イノベーション事業による成長」と「安定的経営基盤の確立」であり、それを3つの施策をベースに進めていこととなる。その3つの内、最優先項目となる1つ目が「日立の強みを発揮するグローバルな成長戦略の推進」。2つ目が「社会イノベーション事業への経営リソースの重点投入」、3つ目が「経営基盤強化による収益安定化」となっている。

同社の社会イノベーション事業は、建設機械などの「産業・交通・都市開発システム」、HDDやデータセンターなどの「情報・通信システム」、スマートグリッドや発電所などのエネルギー関連の「電力システム」と材料やパワー半導体などのデバイスを組み合わせた分野。こうした分野に対し、「日立グループ各社が持つ情報や経験、築き上げてきた信頼を活かしグローバルに展開し、"社会インフラ"と"IT"を融合させることによる全世界、各地域それぞれの社会イノベーションのニーズへ対応する。加えて、環境先進技術と経験をもとにグローバルで求められる環境システムの構築を進めていく」(同)という視点で注力していく。

日立の社会イノベーション事業の分類

国を問わずにニーズを見極めることで成長を狙う

グローバルな成長戦略の推進については、日本はもとより先進国、新興国問わず、顧客ニーズを確実に捕らえるために現地主導を徹底、その地域の市場動向やリスクを現地で見極め対応を図ることで、細やかな対応を図っていく。また、地域ごとのパートナーと連携を図ることで、地域ニーズのさらなる掘り起こしを行い、自社の強みを活かした都市づくり、データセンターといった新規事業の拡大を狙う。

グローバルでそれぞれの地域ごとの司令機能を強化することで、より現地でのきめ細かな対応を実現する

例えば中国については、同社は1981年より進出しており、現在1兆円を超す売り上げ地域へと成長しているが、今後は強い事業である建設機械や昇降機、タービン、ポンプ、鉄道などのさらなる競争力強化に加え、「日本で培った環境技術を活用することで環境システム事業の拡大を図る」(同)とする。また、こうした中国での経験をもとに、「インドから東南アジアにかけたアジアベルト地帯への展開も推し進めていく」(同)ことで、事業規模の拡大を進める計画。

中国での成長戦略の一例。中国での経験を武器に他のアジア地域への進出も狙う

さらに、欧州での取り組み、特に発電事業に関しては欧州司令塔である日立パワーヨーロッパ(独)の機能強化を図ることで、アフリカ地域などへの対応の強化を図っていくほか、米国ではストレージ事業などのエンタープライズは現地が製品、販売戦略ともにリードしていることから、「米国で10年の歴史を持つコンサルティング業とこうしたICT事業を結び付けることで、そうした差別化ソリューションをグローバル、特にアジアなどに展開していく」(同)ことで、日本以外の地域の売上比率(海外売上比率)を2012年度に50%超まで引き上げる(2009年度は41%)ほか、海外人員も2009年度の12万9,000名から2012年度には16万1,000名へと拡大させる計画。

欧州と北米における成長戦略の一例

一方の日本は、2009年度の23万1,000名から2012年度は21万7,000名へと人員を縮小する方針だが、「市場の成長鈍化と言われているが、社会のニーズに応えることができればまだまだ成長の余地は大きい」(同)とし、重要市場基盤として、情報・通信分野についてはクラウドやスマートグリッドというテーマを中心に事業を進めていくほか、電力分野については「建設中の施設を確実に建てるほか、今後の受注の確保を狙う」、そして社会・産業分野については「整備新幹線やビル全体の高付加価値化サービスの拡充など、日立としての強みを活かす」(同)ことで、全体としての成長を目指すとした。

海外の事業に注力するが、日本も重要な市場であることには変わりなく、これまで培ってきた実績と信頼を足がかりに、顧客の海外進出支援まで含めた対応を行っていく