5月18日、米IBMでクラウドコンピューティング担当のCTOを務めるKristof Kloeckner氏が、東京都内で同社のクラウドコンピューティングへの取り組みについて説明を行った。同氏は、現在注力しているクラウド関連技術、リリース手予定の製品、今月買収を発表したクラウド企業の米Cast Iron Systemsの製品との統合などについて語った。

米IBM Chief Technology Officer, Enterprise Initiatives and VicePresident, Cloud Computing Platforms Kristof Kloeckner氏

サービスマネジメントはクラウドの基盤

同氏は初めに、同社のクラウドコンピューティングの取り組みの概況について説明した。同社はクラウドを業務を最適化する手段と位置付けており、「開発・テスト」、「デスクトップ」、「コラボレーション」、「解析」、「コンピューティング」がクラウド導入のスタートに適している分野であるとして、サービスの提供を開始するともに自社でも業務をクラウドに移行している。

「当社は、解析サービスのBlue Insightを12万人の営業スタッフに提供しており、また、デスクトップサービスのWorkplace Cloudを700人の開発者に提供している。将来はPaaS(Platform as a Service)の提供を予定している」

また、「統合されたサービスマネジメントはクラウドの基盤であり、そのために、ユーザー自身がサービスの展開や管理が行えるようにする必要がある」という。

さらに同氏は「クラウドはITの標準化と自動化を推進する。もちろん、仮想化技術はクラウドコンピューティングにおいて重要な技術だが、実際にユーザーが削減したコストの70%~80%は標準化と自動化によるもの」と述べた。

Cast Ironの技術はサービスの連携に活用

同社のクラウドコンピューティングのフレームワークは、「業務計画/ライフサイクル・マネジメント・サービス」、「インテグレーテッド・サービスマネジメントとセキュリティ」、「各種サービス」、「既存サービスとサードパーティのサービス」から構成される。

各種サービスは層になっており、「インフラストラクチャー・サービス」、「共有ミドルウェア・サービス」、「プロセス/コラボレーション/解析サービス」、「業界固有サービス」の順に積み重ねられている。

これらのうち、データベースやメッセージングなどが含まれる共有ミドルウェア・サービスの重要性が特に高まっており、パートナーと協業して拡充を図っていくと、同氏は語った。

各種サービスはそれぞれ既存サービスやサードパーティのサービスと統合することが想定されている。また、今月買収が発表されたCast Iron Systemsの技術は、クラウド化したアプリケーションと企業内のアプリケーションの統合に活用される。

WebShpereによって構成されるプロセスに関するサービスは数ヵ月前にベータプログラムが開発されたが、同サービスにもCast Ironの技術が用いられている。

注力技術は高度な仮想化技術とマルチテナントミドルウェアサービス

同社が現在、クラウド関連技術の中で重きを置いている技術は「高度な仮想化」と「マルチテナントミドルウェアの構築」だという。

「仮想化については、オープンソースのKVMやハイパーバイザといったより高度な技術の拡張を進めている。大規模なマルチテナントのミドルウェアのサービスを構築するため、ミドルウェアのイメージのパターンを組み合わせる技術に取り組んでいる。マルチテナントミドルウェアは1年以内に公開したい」

また、最近発表されたテストに関するサービス「Smart Business Development and Test on the IBM Cloud」は、標準化されたインフラと事前に構成された各種ソフトウェアを提供する。料金体系には、開発テストに適している従量課金制が採用されている。同氏は、今四半期には同サービスが利用可能になると説明した。

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同社は数百の顧客にクラウドを導入したが、顧客はさまざまなメリットを得ているそうだ。人件費を50%削減した例もあれば、ハードウェアの稼働率を75%向上して資本経費を削減した例もある。そのほか、アプリケーションのプロビジョニングが数週間から数分を短縮したり、ソフトウェアの不具合を30%削減したりといった企業もあるそうだ。

技術として利用が広がるのか危ぶまれていたクラウドコンピューティングだが、すでに成熟期に差し掛かりつつあると言えよう。日本の企業は各種調査でも他国の企業に比べてクラウドに関心が高いと言われており、今後ますます導入企業は増えるだろう。

Kristof氏は「クラウドはサービスのデリバリを変える」と話すが、その場合、企業におけるITのあり方も変わっていくはずだ。企業向けクラウドを牽引してきたIBMからまだまだ目が離せない。