「ソーシャルコンピューティング」というイノベーション

--Adobe Creative Suite 4の特長として、オンラインサービスの拡充があったと思います。「Kuler」では活発なコミュニケーションが生まれているようです。ここまでコミュニティが成立することを事前に予想されていましたか?

デヴィッド アドビでは現在、アプリケーション開発に限らず実行していこうとしている3つのイノベーションがあります。そのうちの一つが「ソーシャルコンピューティング」です。FaceBookやMy Spaceを見ても、リアルな友人同士だけでなく、世界中の人とサイトを通じてつながっています。そのため、色や配色に関心をもっているデザイナーもコミュニティに参加するのは自然な流れなのではないかと予想していました。

そして、「Kuler」が面白いのはWebサイトだけではありません。さらにそこから、気に入った色をIllustratorに持って行けることも評価されています。オンラインサービスやコミュニティによる共有をテーマにした機能は、これからさらにリリースされていくと思いますよ。

Adobe Flash Catalystがもたらすダイナミックコンテンツ

--現在、クリエイターは新たなメディアへの早急に求められる中で焦りや不安を抱えていると思います。

デヴィッド 確かに、元々は印刷媒体向けのデザインをやっていたクリエイターがWebやモバイルデバイス、その他のメディアに対応するスキルを身に付けなければならないと感じていると思います。アドビとしてやらなければならないのは、スキルを身につけたい、市場のオポチュニティを開拓していきたいと考えているユーザーに向けた機能を搭載することです。

ブランドプロモーションを行う中で、紙媒体での広告だけではダメだということを各企業が気づき始め、同じブランディングを他の媒体でも展開する形に変わりつつあります。そのとき、ブランドのアイデンティティを守れるのは、やはり紙のデザイナーなのではないでしょうか。

実際に米国では、紙のデザインからクロスメディアに対してクリエイティビティを発揮するグラフィックデザイナーが増えてきています。広告予算の使われ方も印刷媒体からWebやモバイルなどに細分化されてきています。そこにデザイナーも適用する必要があるのです。

--ただ、新しいメディアへのチャレンジはクリエイターにとって簡単なことではありませんね。

デヴィッド 新しいスキルを身につけてWebやモバイルといったメディアへの対応力を強化すること。これがクリエイターに課せられた最大の課題です。その中で考えなければならないのは、デザインはもはや静的なものではなく、インタラクティビティ、モーション、データと3つのポイントを備えたダイナミックなデザインという視点で考えなければならないと言うことです。

先日、日本で行った「Adobe Creative Summit 2009」では、ダイナミックなコンテンツをAdobe Illustratorで作成し、Adobe Flash Catalystで仕上げるワークフローを紹介しました。

Flash技術は非常に重要なプラットフォームですが、これまでWebメディアに対応するためにはHTMLやAction Scriptといったコードを知る必要がありました。Adobe Flash Catalystは、インタラクティブなコンテンツをもつダイナミックなデザインを、コードを書かずに実現できます。今後のメディア展開において、重要な意味を持つツールになっていくと思いますよ。是非、楽しみにしてください。