ソフトウェア開発に必要なのは「初心者にとって使いやすく、プロユーザーにとって奥行きのあるものを提供すること」と語るAdobe Illustrator担当シニアプロダクトマネージャー、デヴィッド メイシー(David Macy)氏。同氏に、Adobe Illustrator CS4について、そして、デベロッパー向けにベータ版が公開されている「Adobe Flash Catalyst」について伺った。

Adobe Illustrator CS4、ユーザからの評価

デヴィッド メイシー(David Macy)
アドビ システムズ 社 Adobe Illustrator担当シニアプロダクトマネージャー。Adobe社への入社前はEFI(Fieryのメーカー)で製品企画とデザインのディレクターを務める。また、自身はスチール彫刻家としても活躍

--Adobe Creative Suite CS4におけるユーザーの評判はいかがでしょうか。

デヴィッド メイシー<(以下、デヴィッド) 非常に良い評価を頂いています。Adobe Illustrator CS4で搭載された新機能は、驚くようなものもあれば、長年にわたって要求していた機能も搭載されていると多くの声を頂きました。今までより簡単に使えるという声もあれば、生産性がより挙がるという声もあります。

--その中で、ユーザーからの評価が高かったのはどのような機能でしょうか。

デヴィッド まずは「スマートガイド」です。スマートガイドはAdobe Illustrator CS2から搭載されましたが、CS4では機能が大きく改善されました。そして、「複数のアートボード機能」も評価が高いですね。

--「複数のアートボード」機能は、ページ物の印刷物データ作成に使いたいという声も聞かれますが。

デヴィッド 確かにそうかもしれません。ただ、雑誌などの出版物を制作するために搭載したわけではないんです。たとえば、ブランディングを手掛けるクリエイターは、複数バージョンのロゴをさまざまな印刷物に展開します。このとき、一つ一つのオブジェクトを複数ファイルで管理するのは大変なさぎょうですよね。ですから、「複数のアートボード」機能は散在するコンテンツを一つのファイルにまとめて管理することが元々の目的でした。そのため、ページ展開に必要なノンブルや目次作成機能は搭載していません。これらはInDesignが強いですからね。

--「複数のアートボード」機能は、旧Macromedia FreeHandユーザーが待ち望んでいた機能とも言えますね。

デヴィッド FreeHandは、2007年に製品開発を終了し、新バージョンのリリースもバグの改修も行わないことを発表しました。

我々の使命は、FreeHandの中で最も価値のある部分やユニークな部分を抽出し、Adobe Illustratorに搭載することです。ご指摘の通り、「複数のアートボード」機能はこの一連の活動の中で搭載された機能と言えます。

--一方で日本語版においては、とくに組版機能の開発について積極的な取り組みが見られないように思われます。

デヴィッド 組版の精度を上げていくことは常に取り組んでいかなければならない課題ですが、タイプエンジンに対して大きな変更を行うことは避けるべきだと考えています。

ユーザーの皆様はご存じだとは思うのですが、過去にそれをやったことがあり、お客様の間に大きな混乱を起こしてしまったことがありました。再び同じことをやってしまうとお客様の間に新バージョンへの不安と混乱を与えてしまいます。ですから、そういう問題を再発させない努力をしながら、お客様の要望に応えていくことが重要だと考えています。