ダッソー・システムズは、4月1日付けで、IBM PLM(Product Lifecycle Management)の事業部門を統合したことを受けて、同社の日本における事業展開などについて説明した。

ダッソー・システムズは、2009年10月26日にIBMからPLM事業を統合すると発表。このほど、IBMが持っている約1,000社の顧客基盤や関連資産を含めたPLMの事業を6億ドルを投資して統合し、IBMから約700人の社員がダッソー・システムズに移籍するとともに、新たにグローバル・アライアンス・パートナーシップを結び、IBMは、

  • ミドルウェア
  • ビジネス・トランスフォーメーション
  • アプリケーション・サービス
  • ダイナミック・インフラストラクチャー

を通じて、PLMインテグレーションに注力する一方、ダッソー・システムズPLMソリューションの顧客に対して、継続的に支援する。

IBMのPLM事業を統合し、約700人のIBM社員がダッソー・システムズに移籍した

また、両社は、PLM環境の開発、展開およびサポートに向けて、共同で投資を続け、世界中の顧客に対して、ソリューションを提供するとともに、プロフェッショナル・サービス、クラウド・コンピューティング、ミドルウェア、フレキシブル・ファイナンシング、ハードウェア、営業および流通分野において協力を強化する。

ダッソー・システムズでは、「研究開発、営業およびサポートのチームが完全に統合されることにより、顧客のビジネスの効率化を図り、顧客満足度の向上が図れるほか、ダッソー・システムズの最新の3DとPLMコラボレーティブ・テクノロジー、そしてIBMのエンタープライズ・インテグレーションおよびサービスにおける専門知識を最大限に活用することで、お客様のビジネス成功のために必要な中核となるアプリケーション群に、PLMを取り入れることができる」としている。

ダッソー・システムズ 代表取締役社長 末次朝彦氏

ダッソー・システムズの代表取締役社長である末次朝彦氏は、「ダッソー・システムズは設立以来、製品開発に軸足を置き、IBMが販売するという体制だったが、2008年から大手企業向けにはIBMが販売し、それ以外は、ダッソー・システムズがパートナーを通じて販売を行っていた。今回の統合により、開発と販売が一本化することになる。また、これまではギリシャ人やフランス人が日本法人のマネジメントを行っていたが、昨年7月に、私が初めての日本人として日本法人社長に就任し、営業に関するマネジメントはすべて日本人となった」として、日本法人の体制が大幅に変更したことを強調した。

4月1日からのIBMとの事業統合により、日本における従業員数は、従来の350人から500人規模に拡大。「今後は、エネルギー、ハイテク、ライフサイエンス分野に、日本では注力していく。PLMオンラインという世界を、クラウドモノづくりという言葉に置き換えて、提案していきたい」(末次社長)としている。なお、日本法人における2010年1月 - 3月の業績は、計画した予算を達成しているという。

大手企業を担当するダッソー・システムズ エンタープライズBT事業部 バイス・プレジデントの土生稔氏は、「今回の統合により、より強化された製品、サービスが提供できるようになる。IBMとの新たな関係においては、日本では、すべての顧客を訪問し、同意を得ている。ダッソー・システムズで開発と営業とを一体化した顧客対応ができること、ここ数年は同じ製品をIBMとダッソーがぞれぞれのチャネルを持っていたために、市場の混乱を招いていたことを解消できるという点が好意的に捉えられている」とした。

また、パートナービジネスを担当するダッソー・システムズ バリューセリング事業部 バイス・プレジデントの鍛治屋清二氏は、「これまでは、IBMの先にあるパートナーからの販売と、ダッソーから製品を引いて販売するパートナーなどがあり、2つのチャネルが混在していたものが解消できるようになる。パートナーにとっても、意味を持つ統合になる。今後はパートナーチャネルが一本化した上で製品を訴求できるようになる」とした。

ダッソー・システムズ エンタープライズBT事業部 バイス・プレジデント 土生稔氏

ダッソー・システムズ バリューセリング事業部 バイス・プレジデント 鍛治屋清二氏

ダッソー・システムズ CATIA BT営業部ディレクター 田中昭彦氏

ダッソー・システムズでは、PLM 2.0を実現するプラットフォームとして、V6 PLMソリューションを投入しており、これまでに航空業界、自動車業界、アパレル業界など、250社以上の導入があるという。

  • グローバル・コラボレーティブ・イノベーション
  • ライフライク・エクスペリエンス
  • 単一PLMプラットフォームによる知的資産の管理
  • オンライン・クリエーション&コラボレーション
  • すぐに利用可能なPLMビジネスプロセス
  • ITコストの削減

という6つの特徴から、イノベーションスパイラルを進展させることができるとしている。

「ダッソー・システムズが提供するPLM2.0は、人々のナレッジとノウハウをつなぐもので、クリエイターによるクリエイティブ・イノベーション、これらを共有して活用するコラボレーション・イノベーション、一般コンシューマなどが活用するソーシャル・イノベーションを実現できるツールである。新たな時代に、新たなツールが必要であるという観点から、当社のPLM2.0を多くのユーザーに理解していただいている」(ダッソー・システムズ CATIA BT営業部ディレクターの田中昭彦氏)とした。

イノベーションスパイラルを発展させるPLM2.0

また末次社長は、「"3D For ALL"がダッソー・システムズのビジョン。モノづくりにおいて、形や切り口、壊れ方といったものを、仮想的に3次元で体験することが、新たな潮流になってくるだろう。ダッソー・システムズは、モノを作るための資源を削減することに貢献し、完成したものに対する資源削減に貢献し、全世界のさまざまなレギュレーションに適合したものづくりができるという点に力を発揮したい。自然と人間とモノとをうまく融合させ、モノを作ることができるソリューションを提供する会社を目指す」とした。

ダッソー・システムズのビジョン「3D For ALL」

ダッソー・システムズは、3DとPLMソリューションにおいて、80カ国以上、11万5,000社以上の顧客を持つ。1981年から3Dソフトウェア市場に参入。業界プロセスを支援するPLMアプリケーションソフトおよびサービスを開発。コンセプト設計からメンテナンス、リサイクルに至る全製品ライフサイクルにおける3Dビジョンを提供している。また、バーチャル製品設計のためのCATIA、3Dメカニカル設計のためのSolidWorks、バーチャル・プロダクションのためのDELMIA、バーチャル・テスティングのためのSIMULIA、グローバルなコラボレーティブ・ライフサイクル・マネジメントのENOVIA、オンライン3Dライフライク・エクスペリエンスの3DVIAなどを提供している。上海万博の開催にあわせて公開されたオンライン上の万博サイトの一部にも、同社の「3DVIA Virtools」が採用されているという。

ダッソーが考えるイノベーションロードマップ

オンラインによる上海万博のサポート