リコーはこのほど、東京都内で説明会を開催し、第16次中期経営戦略と中期的な経営目標について発表を行った。同戦略は、「狙いの事業領域でトップになる」「環境経営を強化・加速する」「Ricoh Qualityを確立する」「新しい成長領域を確立する」「グローバルブランドを確立する」という5つの柱から構成される。

リコー 代表取締役 社長執行役員 近藤史朗氏

代表取締役 社長執行役員を務める近藤史朗氏は、第16次中期経営計画の基本的な考え方について、「15次中期経営計画で仕込んだ"販売・開発拠点統合""Danka欧州買収""IBMのプリンタ部門買収"などの成果を確実に刈り取るとともに、効率化を推進し、さらなる成長を図っていきたい」と説明した。

ただ、昨今の世界的な金融危機による不況・円高・株安の影響から、営業利益が伸び悩んでおり、当初計画の達成時期を2~3年延長するという。

リコーの第16次中期経営計画

「狙いの事業領域」としては、「画像&ソリューション事業」「企業向け事業」「プロダクションプリンティング事業」「新興市場」が挙げられた。

企業向け事業の拡大に向けて、マネージド・ドキュメント・サービスとITサービスのグローバル展開を図っていく。同氏は、「現在、企業では機器を保有しないという大きな変革が起こっており、当社のビジネスもハードウェア販売からソリューションサービスへシフトしていかなければならないと考えている」と、同社サービス事業への注力を強調した。

マネージド・ドキュメント・サービスは欧州の約200サイトに対し、米州では約2,000サイトに対し提供が行われており、先行している地域の取り組みを中国や他のアジア諸国などに展開していく。また、国内で約5万社が加入しているITサービスは、欧州や米州など他の地域に展開していく。

「国内では、NETBegin BBパック Selectという、ITシステムの導入から保守までオンサイトで行うサービスを提供している。このサービスは専任のネットワーク管理者を置けない規模の企業を対称にしている。サービスをスタートして3年になるが、2009年の加入数は300%に達した」

加えてITソリューション分野における取り組みとして、IBMとの提携が挙げられた。同氏は、「"リコーは何をやってるんだ"とお叱りを受けるかもしれないが」と前置きをしたうえで、「当社とIBMでは顧客規模が異なる。IBMとの提携はすべての規模の企業をカバーする、取りこぼしのないサービスを提供するために必要なもの。今のところ大きな実績はないが、機器の販売だけでなく、オフィスのドキュメントのワークフローに関するサービスなど、サービスにも重きを置いた形でソリューションを提供していきたい」と説明した。

さらに、新たな事業領域として拡大している「プロダクションプリンティング」が紹介された。同事業では、顧客拡大のために、IBMとの合弁会社であるインフォプリント・ソリューションズ・カンパニー(以下、IPS)、買収したIKONによる共同体制を構築するとともに、データセンターや集中コピーセンターといった顧客に提供するサービスのためのインフラを整備した。

プロダクションプリンティング事業のために整備された体制

そのほか、新興市場での事業を拡大するために、MIFの増加に対応すべく、タイ工場の設立、中国・アジアパシフィック・ロシア・インドの販社拡充、ローエンド製品のラインアップの充実がなされた。これまで5極のうち、アジアパシフィックだけ生産拠点がなく、タイ工場は最後の海外工場となる。

同氏はグローバルのビジネスについて、「現地の人が中心となるビジネスを展開していきたい。例えば、ネスレは南米の人に乳牛を飼ってもらい、それを原料として現地でビジネスを展開しており、こうした形を目指したい」と述べた。

また「新しい成長領域を創出する」という戦略の柱については、プロジェクションシステム事業への参入が例として挙げられた。中期的な経営目標では、5年以内に新規事業の比率を売上高の25%にまで高めることが掲げられている。

現在、米州では、リコーUS/カナダ、IKON、IPSなど5つの企業がビジネスを行っている。なかでも、IKONとはリーマンショック以降、パイの取り合いになることもあるという。そうした各企業のシナジーを高めるため、同社は4月1日に米州の5企業を統括する「RICOH HOLDING AMERICA」を立ち上げる。