2月3日より5日まで行われた印刷メディア展示会、PAGE2010。各社の出展については「『PAGE2010』-- 注目各社による今年の動向を総まとめ」のレポートを参照されたい。同レポートに引き続き、今回のPAGE2010で注目のハードウェア3製品を紹介する。第2回は、エプソン販売の水性ホワイトインク搭載 軟包装プルーフ向けインクジェットプリンターを紹介しよう。

エプソン販売 水性ホワイトインク搭載 軟包装プルーフ向けインクジェットプリンター

ボディ自体は10色インクモデルのPX-H8000(44万8,000円)と同様だ。柔らかい軟包装プルーフ用透明フィルムを安全に取り扱うためフィルム用のスタッカーが標準装備される。

本体価格は海外では1万5,000ドル、ホワイトインクは620ドルで販売されているが、国内価格は未定とのこと。写真右はスタッカーを装着した状態(ただし写真は海外モデル)

PX-H8000同様、左インクベイに6つのカートリッジ、右インクベイに5つのカートリッジが装填される仕様だが、ブラックインクはフォトブラックのみとなる。また、グレイとライトグレイはなく、その代わりに、白インクと2つのクリーニングカートリッジが装備されている。

この新開発された白インクの凄いところは、まったく臭いがしないことだ。一般的に、溶剤系インクはもちろんのこと、UV硬化インクを使用したプリンタでも若干の臭気を伴うため設置場所は自ずと限定されるものだ。ところがこの製品は普通の水性顔料のインクジェットプリンタと同様に扱えるのである。デザイン事務所に設置できるのはもちろんのこと、パッケージデザインの秘匿性を重視する食品メーカーの開発部門などへの設置も考えられる。

なお、白インクは顔料が沈殿するといった宿命的な問題点がある。そのためプリンタによっては大がかりな白インク循環システムを必要とするが、本製品の白インクは沈殿しにくい成分を採用しているため、撹拌は1週間に一度、手で振る程度で済むらしい。

写真右は本製品の白色インクの構造図。白インクの粒子は中が空洞になっており、光の散乱作用で白く見える仕組みだ(人間の目に白という色として認識される

写真左はプリンタ操作パネルのLCDディスプレイ部。白インクの撹拌が必要な時期になると、このLCDパネルが警告を表示して知らせてくれる。写真右下は左インクベイドアを開けたところ。下部分のイラストにあるように、白インクカートリッジを手に持ってシェイクさせて撹拌させるようだ

さて、PX-H8000と異なり、ブラック、グレー、ライトグレーのいわゆる「K3インク」ではないため、グレーの階調再現がPX-H8000に比べて劣るのが気になるところだ。これは軟包材のシミュレートを意識してグレー階調よりオレンジやグリーンなどの特色再現を優先したためらしい。確かにグラビアやフレキソ、スクリーン印刷では写真画質よりも特色の方が重要だろう。

左は本製品の色度図。オレンジとグリーンを搭載しているため、それら色域が拡大されている。右写真のように軟包装の世界では写真の階調よりも特色再現が重視される傾向にある。オレンジインクとグリーンインクは必須と言えよう

軟包装では用途に応じて裏打ちと表打ちが使い分ける必要性がある。表打ちとは先に白インクを印刷しておき、その上にカラーを重ねる印刷方法だ。透明/不透明のメディアのどちらでも利用できる。裏打ちとは透明フィルムにカラー、そして白インクの順番に印刷し、印刷されていない裏面からその印刷物を見る目的で使われる。本製品の場合は、それらモードの切換は対応のソフトウェアRIPで行う。

右上は海外で本製品に対応予定を発表したEFI社のソフトウェアRIP「EFI Colorproof XF 4.1」の操作画面。画面下側の「印刷順序:」の「白にカラー」が表打ちにあたり、「カラーに白」が裏打ちになる。写真下は本製品で裏打ちしたドリングボトルのラベルサンプル

軟包装物のダミー制作というと、ドナーを用いた高価なDDCPや溶剤やUV系インクのプリンタを利用するのが今までの方法であった。本製品のように扱いが簡単で環境に優しい白インク対応プリンタが出現すると、軟包装プルーフのワークフローが劇的に変わるかもしれない。エプソン販売には、本体、白インクともに安価な価格設定を望みたい。