OS基本性能から、仮想化環境まで、多岐にわたり機能改善が行われている「Windows Server 2008 R2」。すでにリリースから5カ月以上が経過しており、簡単な紹介記事も数多く出回っているが、同サーバーが本当に使えるものなのか確信が持てずに周囲の 反応を見守っているシステム管理者は多いはずだ。

そこで、本誌はWindows Server 2008 R2の導入を5人のライターに依頼。その模様を体験記というかたちでレポートしてもらっている。

今回は、井上孝司氏によるHyper-V 2.0導入の続編だ。井上氏が実際にHyper-Vの仮想化環境を活用してみて経験した、メリットやトラブルなどについて綴っている。

実際に使ってみてどうなの?

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井上
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前回は、筆者の自宅で実験用のサーバ環境を構築する際に、Windows Server 2008とHyper-Vの導入によって、実験用コンピュータの台数削減を実現した話について書いた。

その後、Windows Server 2008はR2にバージョンアップ。また、ハードウェアについても入れ替えが発生して、現在は以下のような環境で使用している。

  • CPU : Core2 Duo E6400
  • RAM : 4GB
  • HDD : SATA接続500GB

Windows Server 2008からWindows Server 2008 R2へのバージョンアップにより、Hyper-VもHyper-V 2.0にバージョンアップ、マイクロソフトのホームページなどで得られる情報をもとにメリットについて考えてみることにした。

まずは、システム全体で使用可能なCPUコア数の上限が16~24個から32個に増えているのだが、筆者の手元では2コアしかないので、有り難みがない。R2になって改良された省エネルギー機能にしても入れ替えてすぐにどうこう言うものでもない。

仮想マシンから物理メモリにアクセスする際のアドレス変換処理をハードウェアに肩代わりさせて高速化するSLAT(Second Level Address Translation)についても、その辺の事情は同様なのが惜しまれる。もっともこの機能、Intel EPT(Extended Page Tables)またはAMD NPT (Nested Page Tables)に対応したCPUが必要になるので、活用しようとするとハードウェアの入れ替えが必要になるかもしれない。

個人レベルの小規模仮想化でもHyper-V 2.0のメリットを感じられる機能というと、TCPオフロードやジャンボフレームへの対応により、ネットワーク関連のパフォーマンスを引き上げた点が挙げられる。もちろん、拙宅のネットワークはギガビット・イーサネット化されているから、ジャンボフレームを利用できればネットワーク経由のファイル交換を高速化できそうだ。ただしそうなると、今度は物理ハードディスクの能力が問題になってくるのだが。

しかし、これらは、あくまでも小規模な個人レベルでは実感できないという話であって企業ユースで大規模な仮想化環境を実現して、多数の仮想マシンを一斉に動かすのであればメリットを実感できるそうだ。要は規模の問題である。

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井上
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さて、Hyper-V 2.0には、上記のような目新しい新機能に表れてこないメリットがある。それはディスクI/Oのパフォーマンス向上である。特に可変ディスクが早くなった点は大きく、サクッと使えてしかも早いというマイクロソフトのハイパーバイザーらしさと言えるだろう。

また、Windows Server 2008 R2からゲストOS用統合サービスを標準搭載するようになったため、仮想マシンにOSをセットアップした後で、さらに統合サービスを追加する手間を省くことができるのは助かる。実験目的で利用すると、頻繁にOSのセットアップを繰り返す場合が多いからだ。業務用のサーバで仮想化環境を構築する場面でも、立て続けに多数の仮想マシンをセットアップすることになるだろうから、この場合でも同じようにメリットがありそうだ。

【コラム】仮想マシンをコピーしたら…


Hyper-Vで使用する仮想マシンはひとつの巨大な .vhd ファイルだから、これをコピーしてコンピュータ名を変更すれば、新規にセットアップし直すよりも速く、複数のWindowsサーバを稼働させることができる、と考えた(もちろん、ライセンス違反にならないことが前提である。念のため)。

ところが、こうして複製したWindowsサーバを使ってドメインコントローラを追加しようとしたら、エラーが発生して追加に失敗した。これはよくよく考えてみれば当たり前の話で、Windows自体が持っているSID(Security Identifier)が重複してしまうからだ。コンピュータ名やTCP/IP設定は変更できるがSIDは変更できないので、.vhd ファイルをコピーしてコンピュータ名やTCP/IP設定を変更しただけでは、問題解決にならない。

そこで登場するのがSysprepユーティリティ。作成した仮想マシンでSysprepユーティリティを実行し、マスターとなるVHDファイルを作っておけば、それをコピーして立ち上げたマシンは自動的に初期化できる。これによってWindows自身のSIDも新しくなるので、既存のWindowsとは重複しなくなり、ドメインコントローラの追加も問題なく行える。

ちなみに、このSysprepはWindowsを複数のコンピュータに効率よく展開する際にも活用できるので、企業のシステム管理者なら覚えておいて損はないツールだ。Sysprepについては、以下のサイトが参考になる。

Sysprep の使用方法 : 紹介
http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/bb457073.aspx

Sysprep ツールを使用して Windows XP の展開を自動化する方法
http://support.microsoft.com/kb/302577/ja

Sysprep で Windows のライセンス認証またはボリューム ライセンス メディアを使用して Windows XP を展開する方法
http://support.microsoft.com/kb/299840/ja

Sysprep でサポートされていない使用方法
http://support.microsoft.com/kb/828287/ja

SysPrepは、複製した仮想マシンの再構成やWindowsの展開に活用できるため、覚えておきたいツール。画面は、仮想マシン内でSysPrepを起動したときのもの。

なお、Windows XP やWindows Server 2003 の頃までは、Sysprepをするための準備が必要だったが、Windows 7 や Windows Server 2008 R2 はSysprep.exeが標準でOSに入っている(C:\Windows\System32\Sysprep\sysprep.exe) ので、準備は不要である。ちょっとしたことだが、かなり楽になった。