「iPhone」「Nexus One」と巨大な技術企業が自社ブランドを押し出した携帯電話を出している。ユーザーはオペレータの端末というより、Apple/Googleの携帯電話を買い、Googleのアプリケーションを利用し、「App Store」「Android Market」でアプリケーションを入手する - オペレータは単なるパイプ役に過ぎなくなるのか? Googleは、これまでモバイル業界が構築してきたビジネスモデルを根本から壊す気か? -- スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2010」で2月17日、基調講演のステージに登場したGoogle CEOのEric Schmidt氏に対し、モバイル業界はさまざまな疑問をぶつけた。

今年のMWCで、「Android」は主役の1つだった。主力端末にAndroidを採用したSony Ericssonはもちろん、さまざまなところでAndroidは使われている。アプリケーションのデモではNexus Oneが使われる - Android発表から2年半、Googleが急速にモバイル市場で浸透を果たしたことの表れと見ていい。もちろん、Schmidt氏がMWCにスピーカーとして登場するのは、これが初めてだ。

Schmidt氏はこの日、"Mobile First"をキーワードに、Googleのモバイルへのアプローチについて語った。

MWCのスピーカーとしてはじめて登壇したGoogle CEOのEric Shmidt氏

Mobile Firstの背景にあるのは、

  1. コンピューティングパワー
  2. コネクティビティ
  3. クラウド

という3つ"C"のトレンドだ。たとえばクラウドコンピューティング。高速な無線通信を利用してPCと同様にモバイルからもWebにある情報にアクセスできるようになる。これからはデータをコピーするのではなく、複製するようになり、情報をSIMに保存することはなくなるだろうとSchmidt氏は予想する。

「モバイルはこの3つが交差するポイントになる」とSchmidt氏。「クラウドを活用しないアプリケーションや高速ネットワークを利用しないモバイル端末ではだめだ。この3つを正しく使うことができなければ、競争に勝つことはできない」と続ける。

ポータブル、パーソナル、ヒューマン、位置情報、スピーカー、カメラなどの特性を持つモバイルはバリューの高いエンドポイントであり、可能性は無限だ。現在、Googleのトップ開発者は"Mobile First(まずモバイル)" -- 最初にモバイルを念頭に作業しているという。

そして、その成果の一部として、2人のGoogle開発者が最新のモバイル技術を披露した。

1つ目はこの日ドイツ語対応が発表された「Google Search by Voice」だ。音声認識機能を利用した検索サービスで、ドイツ語版は英語、日本語、中国に続き、4言語目となる。

ドイツ語対応した「Google Search by Voice」

ベルリンにあるクラブの名前に対する検索結果

画像認識技術を使った検索サービス「Google Goggles」では、光学文字認識と翻訳の2つの技術を組み合わせ、ドイツ語のメニューを写真に撮ってGoogle Gogglesに送り、英訳を返してみせた。

スクリーンにうつったサグラダ・ファミリア教会を撮影し、Google Gogglesで検索した検索結果

ドイツ語のメニューを写真に撮る

まず文字を認識してテキストに、その後翻訳

英訳結果

もう1つは、Flashだ。Adobe Systemsの「Flash Player 10.1」をサポートしたNexus OneでNew York TimesのWebサイトにアクセスし、画面に埋め込んであるFlash動画を再生するというデモだ。

Flashを埋め込んだNew York Timesの画面。米AppleのCEO、Steve Jobs氏が「iPad」発表時、やはりNYTを表示したが、画面下にある埋め込まれたFlash部分が空白になっていた

New York Timesの画面に埋め込まれていたFlashコンテンツを再生しようとしたがデモではうまくいかなかった

映画の予告コンテンツをFlashで再生

また、「Google Earth」で地震のあったハイチの模様を表示、その後、「Mount Fuji」と電話に向かって話すと、Google Earthの"上空"を飛んで富士山を表示するといったデモも披露した。

Google Earthでハイチを見る。地震後の様子がよくわかる

ハイチから太平洋を渡り、富士山を表示した

携帯電話のもつマイク、カメラなどの機能はまだ潜在性を発揮していない。これは昨年、MWCでスピーチをしたGoogleのVic Gundotra氏も述べていたことだ。Googleは"Mobile First"の下でその膨大な技術リソースを使って、携帯電話の使い方に新しい風を吹き込もうとしているようだ。Schmidt氏は冗談混じりに、「たとえば、話者が通話中にする咳を分析し、重い病気ではないかどうかを診断するようなものがあればおもしろい」と述べた。そして「"マジック"は着実に起こりつつある」と続けた。