EMCジャパン、シスコシステムズ、ヴイエムウェアの3社は2月9日、米国で2009年11月に発表された「Virtual Computing Environment(VCE: 仮想化コンピューティング環境)」連合による日本市場での戦略について合同で会見を行った。3者はEMCのストレージ、シスコのUCSおよびネットワーク製品にVMwareの仮想化環境を統合したプライベートクラウド用のパッケージソリューション「Vblock」を今後、パートナーを通して共同で日本市場に提供していく。「1社だけでは実現することができない、まったく新しいプライベートクラウドの誕生。3者の技術が完璧に統合されている」(シスコ エザード・オーバービーク社長)、「仮想化市場で最も強い3者による"強者連合"」(EMCジャパン 諸星俊男社長)と強い自信を見せる。

左から、シスコシステムズ社長のエザード・オーバービーク氏、EMCジャパン社長の諸星俊男氏、ヴイエムウエア社長の三木泰雄氏。右にあるのは3者のソリューションで構築されたワンパッケージのクラウド環境「Vblock 1」

クラウドコンピューティングという言葉が一般化する中、とくにTCO削減という視点から中堅 - 大企業が注目しつつあるソリューションがプライベートクラウドだ。サービスプロバイダによって外部から提供されるサービスと、企業内で提供するサービスを組み合わせ、大規模な仮想化環境を構築することで、ユーザ企業は"サービスとしてのIT(IT as a Service)"利用に徹することができる。

プライベートクラウド導入を検討している企業は、ITコスト削減と早期導入のどちらか(または両方)を望むことが多いが、最近は早期導入への関心がより高まっている傾向にある。そのため、ユーザ企業への迅速な導入が可能になるよう、ワンパッケージ化したクラウドソリューションを提供するベンダが増えているのも事実だ。

そうした激化する市場にあって、Vblockの最大の強みは、「ITインフラストラクチャがプラグアンドプレイでスタートできる」(EMCジャパン 雨堤政昭氏)ほど迅速な導入が可能になるという点だ。当然ながら、異なる企業の技術を1つに統合したパッケージとして提供するならば、パッケージ内での完璧な統合が求められるが、これに関してはすでに「3者によって"完璧に"試験/検証済みで、クラウドをまたがった連携も可能。すぐにでも(顧客に対して)提供できる状況にある」(エザード氏)という。管理ソフトウェアについても各社の機能をひとつのインタフェース(UIM: Unified Infrastructure Manager)から利用することが可能だ。さらに「仮想化市場ではデファクトスタンダードといえるVMware、ストレージシェアでは世界No.1のEMC、ネットワークの世界ではダントツの知名度と実績を誇るシスコ、という各ソリューションでのリーダー3者による"強者連合"である」(諸星氏)ことにより、競合他社よりも優位に立っていることを強調する。

もうひとつ特筆すべき点としては、リソースを重要度や使用頻度に応じてリアルタイムで自動最適化するEMCの「FAST」や、仮想マシンの移動/最適化を可能にするVMwareの「vMotion」「DRS」といった「世界最先端の自動最適化機能をそのまま利用できる」(雨堤氏)ことが挙げられる。また、仮想環境の規模拡大に応じて、無停止で拡張が可能という点も大きい。

Vblockは「Vblock Infrastructure Package」ファミリとして3タイプが提供される。

  • Vblock 2 … 3,000 - 6,000台のVM。大企業やサービスプロバイダなどに向けたハイエンド構成。構成機器は、Cisco UCS、Nexus 1000v、Multilayer Directional Switches(MDS)、EMC Symmetrix V-Max、VMware vSphere
  • Vblock 1 … 800 - 3,000台のVM。幅広いIT機能を提供する中規模向けの構成。構成機器は、Cisco UCS、Nexus 1000v、MDS、EMC CLARiON CX-4、VMware vSphere
  • Vblock 0 … 300 - 800台のVM。小規模なデータセンターニーズに対応するエントリレベルの構成。構成機器は、Cisco UCS、Nexus 1000v、EMC Unified Stotage、VMware vSphere

Vblock 1およびVblock 2は9日から提供が開始され、Vblock 0のみ今年半ばからの提供となる。販売および導入はパートナーが行い、現在、アクセンチュア、伊藤忠テクノソリューションズ、新日鉄ソリューションズ、東芝ソリューション、日本ビジネスシステムズ、ネットマークス、ネットワンシステムズ、ユニアデックスの8社の参加が決定している。なお、シスコシステムズ、EMCジャパン、ヴイエムウェアの"VCE連合"は3社による専門の営業/SE/サポート窓口を結成、一元化したVblock関連サービスを提供していく予定。