連携・同期を意識したメモアプリサービス『Simplenote』

iPhone/ iPod touchには標準でメモアプリケーションが付属している。だが、入力した内容は、Mac OS X標準のメールアプリの備忘録としか同期できない。これでは使い勝手がよいとは言えない。そのためもあってか、iPhoneには多数のメモアプリケーションが存在する。ただ、中には写真や位置情報、動画などiPhone上のさまざまな機能を取り込んだため、メモ本来の機能が弱くなってしまっているものも少なくない。

iPhoneアプリが基本ではあるが、Webサービスも提供されている

そんな中、オススメなのが『Simplenote』。メモ本来の使い方に特化したサービスで、Webサービスと連動したiPhoneアプリを提供している。外部サービスとの連携がよく考えられており、使い勝手が良い。今回はそんなSimplenoteの便利さについてまとめてみた。

利用するにはiPhoneアプリ購入が必須

iPhoneアプリ版「Simplenote」は、App Storeで230円で販売されている(iTunesでの購入はこちら)。Simplenoteのサービスを利用するにはユーザ登録が必要だが、登録作業はiPhoneアプリからしか行なえない。サービスを利用するにはアプリの購入が必須というわけだ。

ノートの一覧画面。動作は軽快で使い勝手がよい

iPhoneアプリの使い方

Simplenoteは、iPhoneアプリとWebサービスを組み合わせたサービスだ。作成したメモは保存時にサーバ側と自動的に同期され、Webブラウザ上からも閲覧・編集することが可能になる。まずはiPhoneアプリ版の基本的な使い方を確認していこう。

横向きの表示も問題ない

長文を書く際には横向きのほうが便利

作成したメモは一覧画面で確認でき、選択すれば内容の確認や編集が行なえる。横向き表示に対応しているので、QWERTY配列による長文の入力も容易だろう。メモはそのまま電子メールとして送信できるようにもなっている。メモ内のURLは自動的にクリッカブルになり、Safariで開くことができる。

ノートの閲覧と編集画面を兼ねているのですぐに編集できる

各メモは保存時に自動的にサーバと同期されるので、万が一iPhoneのデータが消えたとしてもオンライン上のメモを利用できる。また、オフライン時でもメモの作成や編集は可能だ。

メモの編集画面はテキストエリアがひとつ、一行目がタイトルとして扱われる。タイトル用の入力欄はないのでスムーズにメモを始められる。他のメモアプリにはタイトルやタグを入力させるものも少なくないが、自分用の簡単なメモという位置づけであれば、このようなシンプルな仕様でも十分ではないだろうか。

プレミアムアカウント

Simplenoteにはフリーアカウントのほか、「プレミアムアカウント」が用意されている。料金は1,200円/年。提供機能は、自動バックアップ/ ノートのマージ/ メールからノートの作成/ RSSフィード/ 通常1日2,000回に制限されているAPIコールが無制限/ ユーザサポート、といったもの。普通に使っているかぎりではAPI制限にかかることはないだろうが、さらに快適な機能を手に入れたい方は購入してもよいだろう。

プレミアムアカウントへの申し込み。iPhoneアプリ上からできる

バックアップなど外部サービスとの連携も

SimplenoteがiPhoneアプリのままであれば、他のアプリと同レベルの魅力でしかない。便利なのは外部サービスとの連携だ。

Webアプリケーション版。使い勝手は良い

まずオリジナルのWebサービスがある。これはiPhoneアプリで作成したアカウントでログインすることで利用できるようになる。Webブラウザ上でメモを編集でき、ローカルアプリケーションのような使い勝手が特徴だ。タイピングを止めると自動的にメモが保存されるので、書くことだけに集中できる。この思考を停止させない雰囲気がメモや執筆のうえで重要な要素になるだろう。日本語も問題なく利用でき、検索は文字を入力するたびにフィルタリングされる。

バックアップアプリケーション。各種形式を指定してエクスポートする

外部サービスとして「Simplenote Backup」というSimplenoteのバックアップサービスも登場している。SimplenoteのユーザIDでログインして利用するもので、メモをTEXT/ CSV/ XML/ Evernote 互換のファイル形式でダウンロードできるようになる。フリーアカウントのユーザは、このサービスを使って的的な手動バックアップを実行するとよいだろう(プレミアムアカウントでも任意のタイミングでバックアップしたい際に使える)。なお、Simplenote Backupはオープンソース・ソフトウェアとして公開されている。

Justnotes。Mac OS Xユーザは必携だ

そしてMac OS X向けには「JustNotes」というSimplenoteと連動するメモアプリがある。メニューバーに常駐するタイプで、ショートカットキーで呼び出せる。小さなフローティングウィンドウを採用しており、ちょっとしたメモにとても便利だ。当然、iPhoneアプリ版Simplenoteとも同期するので、URLを送ったり、iPhoneで入力するには長すぎる文章を送ったりするのに便利だろう。

Greasemonkeyの「Simplenote restyled」を適用した表示。さらに使い勝手が良くなる

Firefoxであれば「Simplenote restyled」というGreasemonkeyが提供されている。Simplenoteの表示をウィンドウいっぱいにしたり、グレー系のUIに変更する。さらに書き心地が良くなるのではないだろうか。

上記に紹介したもの以外にも、「Yojimbo」というテキストエディタとSimplenoteを同期させるソフトウェアが提供されているなど、SimplenoteはWeb APIを使って外部サービスと積極的に連携できるようになっている。こうしたオープンさが、公式サービスだけでは対応できない細かなニーズに応えたり、さらに拡張性を高めることになり、Simplenoteの魅力を増す要因となっている。

なお、Webアプリケーション版Simplenote、Simplenote BackupはGoogle App Engine上でサービスが提供されている。このようなクラウド、iPhoneアプリといったいまどきの技術要素を活用している点も興味深い。

iPhoneだけにメモを溜めない!

iPhoneで利用できるメモ系ソフトはSimplenoteに限らない。標準で付属するメモ、Evernote、YouNote、WriteRoom、Tubmlrといったものが提供されている。それぞれに特徴があるので、自分に合うものが見つかるまで試してみるとよいだろう。

iPhone内にメモが留まってしまうと、本体を紛失した際や再利用性に問題がある。そうした問題点は、Simplenoteでクリアできる。Web APIを通じて多様なアプリケーション、サービスと連携できる点がSimplenoteのもっとも大きな強みと言えそうだ。

著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)

1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。