東欧、南アフリカなどで熱狂的な人気の理由

Operaのシェアは東欧でかなり強い。30%以上のシェアを実現しているウクライナなどのロシア語圏は特にそうだという。中央アジアのカザフスタンや、南アフリカなどでも高い人気をもっている。なぜこういった地域でOperaに高い人気があるのか。理由はシンプルだそうだ。Operaが一番快適にブラウジングできるからだ。

Opera Softwareでは、リリースエンジニアリングの段階で10年前のPCで動作するかチェックが入る。CEOの部屋にも古いPCが置いてあり、このPCで動作するかチェックが入る。この古いPCで動作しないなら、それはバグであり、直すべきものということになるという。

Operaが高い人気を獲得している地域はネットワーク帯域がかなり狭い。アナログモデムの接続速度程度だ。しかもだいぶ古いPCを使っていることが多く、こうした環境でもっとも快適に利用できる最新のブラウザということになると、それはOperaということになる。

Operaはキャッシュマネージメントが巧みで、データの使いまわしがうまい。実際に使ってみるとサクサクと動作することを体感できる。従量制の課金通信では、こうしたキャッシュ機能がそのまま通信料に跳ね返ってくる。Opera miniといったモバイル向けブラウザではさらにこうした要望が強い。Operaでは通信内容を削減するプロキシサービスも提供しており、そうしたサービスもOperaの魅力を引き上げている。Operaは開発コミュニティも充実しており、すでに多くのカスタマイズパックが提供されている。一定のシェアを確保した地域では、こうしたコミュニティの便利さもあって、さらにOperaを利用するユーザが増えるという状況にあるようだ。

PCブラウザ最速はOperaのプライド

気になるのはデスクトップのOperaだ。デスクトップ版のOperaはOpera Softwareの主要財源ではない。しかし、同社の技術力を示す広告塔であり、無碍にはできないプロダクトだ。Chromeが驚異的な速度で性能を引き伸ばすなか、Operaがどういった攻勢をかけるのかが気になる。

Opera SOftware International日本法人代表冨田龍起氏は、たしかにこの2年間は組み込みデバイスや家電デバイスへの開発に注力し、デスクトップブラウザへの取り組みが弱かったかもしれないことを「Operaは最速で熱狂的な支持を得た。この2年間、この面ではちょっと手薄だった感はたしかにある」と説明したうえで「OperaはPCで最速でなければならないというのはOperaの真骨頂でありプライドでもある。それは実現しなければならない」と説明した。

Operaは2月4日(ノルウェー時間)、新しいJavaScriptエンジンCarakanを発表。JITを搭載する新しいエンジンはJavaScriptの動作を高速化させるだろうと多くのOperaユーザの興味を引いた。いつリリースされるのか気になるところだが、これに対して冨田氏は「開発は進んでいる。JITで機械語に変換する機能だが、さまざまな機器で動作するOperaではこれをMIPSであったりARMであったりにも適用する必要があり、クロスプラットフォームを実現することに時間がかかっている。リリース日は今は特定できないが、かなり早い時期に提供できるのではないかと思う」と、近いうちに高速化したOperaが発表できるのではないか説明した。Opera SoftwareのCEO、Jon Stephenson von Tetzchner氏は「遅いのはバグだから、直せ」ということを言うそうで、最速にかけるOperaのプライドは今も健在ということだ。

ちなみにCarakanは「チャラカン」と発音する。OperaではJavaScriptエンジンに歴史上の言語の名前をつけており、Carakanもそこから来ている。Carakanは16世紀から20世紀ごろにかけて使われていた文字で、Javanese文字またはHanacarakaとも呼ばれている。