International Advertising Association(IAA)が11月10日、オンライン広告業界関係者を集めて開催した「Digital Download. Behind the headlines.」において、電通は、iPhoneを利用したAR(Argumented Reality、拡張現実)活用型クーポンシステム『iButterfly』の構想を発表した。
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「iButterfly」について説明する電通 コミュニケーション・デザイン・センター エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター 細金正隆氏 |
電通 細金正隆氏は、iButterflyを「クーポンエンタテインメント」と説明する。クーポンを"蝶(Butterfly)"で表現し、ユーザはそれをiPhoneで捕まえて利用するというものだ。ARアプリとして話題の「セカイカメラ」のように、ユーザは専用iPhoneアプリを使い、iPhoneカメラを通して街中を浮遊する蝶を探し、さまざまなクーポンを入手することができる。他のユーザとの交換も可能だ。「一般的に味気ないクーポンを、クリエーティブが表現を考えて情緒的価値を持たせる」(同氏)。配布する企業のニーズに合わせて、クーポンの出現場所(GPS連動)や出現率は自由にコントロールできるほか、デザインもカスタマイズすることができる。説明の中では、単語カードをモチーフにした「単語蝶」や原宿のファッションをイメージした「ロリータ蝶」などのデザインも紹介された。
細金氏は、このほかにもiPhoneを活用した新たな表現プラットフォーム『PhoneBook』を紹介。デモでは、専用絵本カバーにセットしたiPhone上でコンテンツを楽しめるコンセプトモデルが紹介された。映像だけでなく、iPhoneならではのインタラクティブ性をいかし、実際に画面に指を触れながら読み進めていくという仕掛けも盛り込まれている。「プリントメディアと映像メディアを組み合わせた表現」(同氏)。2010年春には講談社からPhoneBookの第1弾シリーズが登場する予定。今後はパンフレットやカタログ、アートブックなどにも展開していく。
オンライン広告に求められているもの
i ButterflyとPhoneBookは、"オンライン広告のいまと少し先"と題した細金氏の講演の中で紹介されたものだ。広告に対する予算縮小や費用対効果が強く求められる状況では、「純粋な広告的表現は価値やニーズが下がりがち」となり、結果として「広告の形をしていない広告」が増えてくるという。細金氏が手がけたオンライン広告でも、既存の広告にとらわれない形を提供してきた。プレイステーション用ゲーム「ラストガイ」の広告では、普段見ているWebページを"ジャック"してゲームを体験できる「どこでもラストガイ」を考案。ソニーのBlu-ray Recorderの広告では、スクリーンセーバーを通じた商品の疑似体験メディアを考案した。そうした取り組みが結果として企業の情報を効率よく伝達することにつながっているという。
細金氏は、これからの広告は「生活者の時間をムダに奪わないこと」も重要とし、「コンテンツやユーティリティ、メディアの中に溶け込んでいく」と説明。i ButterflyやPhoneBookもそうした広告表現のひとつ。その実現のためにクリエーティブが果たす役割は大きく、従来の広告媒体にとらわれず「表現プラットフォーム自体を作る」ことも求められているとした。