産業能率大学は10月27日、人事担当者を対象に実施した「不況による会社の変化」に関するインターネット調査の結果を発表した。同調査によると、64%の回答者が不況によって良い変化がもたらされたと答えている。

組織全体として今回の不況を契機によくなったことがあるかを聞いたところ(自由回答含む13項目を複数選択)、「ない」という回答は約36%にとどまり、約64%は何らかがよくなったと回答している。

回答の多かった項目は、「残業せずに早く帰りやすくなった」(28.3%)、「ワークライフバランスが取りやすくなった」(19.5%)と、労働時間に関するものが1位と2位を占めた。これに「メンバーが切実感を持って仕事をするようになった」(18.5%)、「より効率よく仕事を片付ける人が増えた」、「職場の変革が進められた」(14.6%)と、仕事の進め方や生産性に関連するものが続いている。

人材教育については、不況によって経営層が「重視しなくなった」のはわずか6.7%で、「より重視するようになった」が32.8%という結果になった。能力開発の方針でも、「個人に任せるようになった」が6.4%であるのに対し、「組織として取り組むようになった」が30.4%と、組織として力を入れようとしている傾向にあると、同大学では分析している。

評価・処遇は、「年功主義の要素が強まった」が2.4%であるのに対し「成果主義の要素が強まった」が37.7%と、企業では利益を確保するためにシビアになっている状況がうかがえる。

今回の不況への対応策を問う質問において、最も多かったのは「人員配置の見直し」(42.6%)で、これに「経営戦略の見直し」(41.6%)、「給与・賞与の一時カット」(36.2%)が続いている。人員のリストラは「非正社員」が33.4%、「正社員」が25.2%という結果に。

同大学では、企業では制度の見直しにまで踏み込まずに、諸費用の削減で不況を乗り越えようとしていると見ている。

今回の不況で実施した施策 資料:産業能率大学

同調査では、給与・賞与や福利厚生費、教育費など6項目について、バブル後の不況と今回の不況における変動についても聞いている。

結果、バブル後の不況よりも今回の不況のほうが削減の変動が大きいとする回答は各項目とも25%程度、一方で今回の不況よりもバブル後のほうが大きいという回答は15%程度だった。 業種別では、製造業では今回の不況のインパクトが強かったようで、各項目とも30%~40%が今回の不況のほうが変動が大きかったと回答している。

バブル崩壊後とリーマンショック後の不況とを各項目ごとに比較 資料:産業能率大学