カナダAbsolute Softwareは9月30日、同社の日本法人が正式に設立され、PCやスマートフォンなどの資産管理とデータ保護サービスソリューション「Computrace」の日本語版の提供を開始したことを発表した。

提供されるのは、デバイスの追跡サービス「Absolute Track」、PCのデータ保護と盗難回収サービス「Computrace One」、データ保護と盗難回収サービスの機能限定版「Computrace for Netbooks」、スマートフォンのデータ保護と盗難回収サービス「Computrace Mobile」の5サービスで、いずれも資産管理機能も搭載している。

法人向け「Computrace」の製品マトリクス(なお、同社では将来的には個人ユーザー向けの製品提供も行っていきたいとしている)

Computraceは、エージェント機能をパートナー企業が提供するPC上のBIOSに搭載するほか、SaaSとしてサービスの提供を開始する際にOS上にもエージェントを搭載することで、サービスが有効化される。BIOSにエージェントが存在するため、万が一OS上のエージェントを消される、もしくはOSそのものをフォーマットされるなどが行われても、BIOSのエージェントが機能することで、OS上にエージェントを復帰させたり、PCのモニタリングなどが可能となっている。

「Computrace」の提供するサービス各種

Absolute Softwareバイスプレジデント グローバル・コーポレート・デベロップメント担当のWilliam Pound氏

同社バイスプレジデント グローバル・コーポレート・デベロップメント担当のWilliam Pound氏は、「セキュリティはさまざまなレイヤがあるが、我々はその中で、PCの中に存在するハードウェアやソフトウェアなどの資産の可視化を重視しており、それにデータの追跡やデータ保護のソリューションが付与されている」と説明する。

具体的には、ユーザ側がサービスの使用を認証すると同社のエージェントがインストールされ、カナダのバンクーバにあるモニタリングセンタと接続される。管理者は、同センタに集約されるデータをチェックすることで、保有PCの資産管理を一括して行うことができる。ここまでは一般的な資産管理ツール的な使用方法だが、これに加えて同サービスは、PCの盗難や紛失の際にPCの現在位置の追跡、位置確認、回収などの支援を行うというもの。

Computraceの提供する価値とサービスの大まかな概要

Absolute日本法人の代表である田北幸治氏

「基本は1日1回センタと通信を行うが、盗難時には15分に1回のアクセスに切り替わり、もししばらくインターネットにつながない状態を経ても、つないだ瞬間にデータのやり取りを行い、場所の特定などを実行する」(同社日本代表の田北幸治氏)という。

また、位置特定のみならず、管理者側で遠隔地にあるPCのデータを消去することも可能だ。消去方法は「OSごとすべてのデータ」「OSだけは残す」「ファイルディレクトリを指定して消去」などから選択が可能なほか、ポリシーをあらかじめ決めておくことで、特定のデータのみ消去することも可能だ。また、データは、最大7回まで上書きすることで、復元を難しくすることが可能。

このほか、IntelのvProが提供するAnti-Theft Technology(AT)と連携することで、管理者がプロセッサ側に働きかけ強制的に電源を落とすことも可能。この場合、再度電源を入れても、BIOS起動時に管理者が指定したパスフレーズの入力が求められる画面となり、パスフレーズを入力しない限りOSが起動することはない。

サービスの流れ

資産管理サービス

管理者側の指示で遠隔地のPCのデータを消去できるほか、vProとの連携によりPCの遮断や使用させないようにすることも可能

こうした状況においても、ネットワークにつながっていればBIOS側のエージェントがさまざまな状況データを送信、同社の回収支援専用チームがその地域の警察などと連携し、PCの回収に向かうこととなる。「PCの回収率は現状で75%程度。だが、回収できなかったからそれで終わりではなく、我々は引き続き諦めずに回収を目指す」(Pound氏)としている。

PC回収サービス(実際にPCのある場所を特定し、警察などとの捜査機関と連携し回収を行う)

なお、別の資産管理ツールなどに組み込む形での使用などについては、個別対応とする。また、価格については、提供されるサービスの組み合わせや期間、台数などにより異なるため、一概には言えないが、「イメージとしては、1台当たり月額で数百円程度と思ってもらえれば」(田北氏)とする。サービスのライセンス期間は1~5年の間を選択可能であり、企業のPCリプレースなどのタイミングに柔軟に対応することが可能となっている。

対応するOSはWindowsが2000/XP/Vista/7としており、Mac OS X v10.3以降のMac OS Xにも対応する。また、スマートフォンとしてはWindows Mobile搭載モデルおよびBlackBerryに対応するとしており、「BIOSにエージェントが搭載していない場合においても、OS上のエージェントはインストールが可能であり、限定的ながら、サービスの活用が可能」(田北氏)という。