下位製品にも重複排除機能を実装

バックアップソフトの分野で世界市場における30%以上のシェアを占めるというシマンテックの重要な戦略の一つが重複排除だ。同社のプロダクトマーケティング部 プロダクトマーケティングマネージャ 浅野百絵果氏は「バックアップは成熟技術である」とし、さらに「重複排除はバックアップソフトにもはや不可欠な技術要素の1つ」と語るが、それでもなおこの機能を重要戦略と位置付けたことには理由があるという。

「数年前には(ストレージの低価格化などを背景に)バックアップ不要論といった意見も目に付いたが、その後CDP(Continuous Data Protection)やJ-SOXといったコンプライアンスの強化、景気後退による予算削減と適正化といった流れが生まれ、実際にはその重要性がさらに増すようになった。CDPについては、今後バックアップソフトに標準的に組み込まれていく可能性もある」

このような背景を踏まえ、同社はそれまで大規模システム向けの製品である「NetBackup」で実装されていた重複排除機能を、下位レンジ向け製品の次期バージョン「Backup Exec 2010」(2009年後半リリース予定)にも適用する予定だ。

Veritas NetBackup 6.5の操作画面

広範なプラットフォーム対応

同社の企業向けバックアップ製品は、2004年にVeritas Software社を買収したことによって強化されたものだが、Windows標準のバックアップツール「NT Backup」は、同社のBackup Execの技術提供によって開発されたものだ。そのため同社はWindowsとの親和性には絶対の自信を持っている。

同社の製品ラインナップは、Windows環境に対してはこのBackup Exec、UNIXやLinux、Windowsの混在環境に対してはNetBackupという幅広いプラットフォームに対応したものとなっているが、浅野氏によると両者は「別の哲学」で開発されているという。

「NetBackupはUNIX全盛時代に生まれた製品であり、長年のユーザーはこちらが使いやすいはず。Backup Execは、専任の管理者が不在でもスムーズな運用を可能にすることが前提となっている」

また浅野氏は、「コスト削減の流れを背景に、企業では、IT管理者に高いスキルを求めることが難しくなってきている」とし、一層Backup Execの存在感が増している現在の状況を説明してくれた。

仮想環境移行を安価にサポート

P2Vへの移行ニーズの高まりに対して同社は、1ライセンス9万9,000円(税抜)という価格で「Backup Exec System Recovery 8.5 Basic Edition」という製品を用意している。この製品は2008年11月から提供開始されており、「最近になって本数が出るようになっている」(浅野氏)とのことだが、安価ながらVMwareやHyper-Vだけではなく、Xenへの移行にも対応しているのが特徴だ。

なおシステム管理の現場では、仮想環境の増加に伴う管理面での負荷が懸念事項となっているが、同社は今後の戦略の一環として、管理プラットフォームの共通化を目指している。この戦略は、2007年に買収が完了したAltiris製品がカギを握ることになるが、現在はAltiris製品のシマンテック製品への対応が順次進められており、AltirisテクノロジーをベースとしたSymantec Management Platformによって、単一の管理ツールでセキュリティからバックアップまで、同社の複数製品を一元管理可能になるという。

複数ベンダー製品の混在による運用負荷の増大は無視できない要素であるため、この点はユーザーへの大きな訴求ポイントとなる。同社は2009年8月に、エンドポイントセキュリティ、メッセージセキュリティおよびバックアップ製品を統合した「Symantec Protection Suite Enterprise Edition」の国内向け出荷を開始しているが、これはユーザーの課題に対する同社の具体的な答えの一つとも言える。浅野氏は「このような製品展開ができるのは、セキュリティベンダーでもある当社の強み」と語る。

中小企業こそイメージバックアップを!

同社によると、エンタープライズ分野におけるバックアップ市場は、ファイルバックアップからイメージバックアップに焦点がシフトしている状況にあるとのことだ。しかし、注力マーケットの1つである中小企業に関しては、「そもそもバックアップという作業自体が行われていないことが多い」(浅野氏)という。このような顧客に対しては、手間のかかる従来のファイルバックアップの概念よりも、イメージバックアップのメリットを訴求し、ソリューションの導入を提案すべきとのことだ。

そこでポイントとなってくるのが、データのバックアップもディザスタリカバリ対策も1本で済んでしまうBackup Exec System Recoveryだ。イメージバックアップは、処理の多いアプリケーションのオンラインバックアップなど高度なバックアップは困難だが、単純な操作で「一気にすべてを取れる」というメリットもある。

SaaS対応について

米国ではすでに[Symantec Protection Network]( http://www.spn.com/ )で展開中となっているSaaSによるソフトウェアの提供だが、「日本ではまだ様子を見ている」(浅野氏)という。ただし「2008年に買収した英メッセージラボのサービスはすでにSaaSによる提供が開始されており、好調に売上を伸ばしている状態」とのことだ。

主な製品
Symantec Backup Exec 12.5 for Windows Servers
Symantec Backup Exec System Recovery 8.5
Veritas NetBackup 6.5

『出典:システム開発ジャーナル Vol.11(2009年9月発刊)』
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