SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 副部長 桐井健之氏

SAPジャパンは9月15日、国際財務報告基準(IFRS:Internatinal Financial Reporting Standards)の導入を支援する「IFRS支援室」を設立すると発表した。IFRS支援室は、営業、マーケティング、パートナー、サービス、開発など、SAPジャパンの全部門にまたがる横断的な組織で、各部門からの社員約15名がコアメンバーとして活動にあたる。

当面の活動予定としては、IFRS支援室に統一窓口を開設して、企業がIFRS移行の際に直面する課題や質問に対応すること、専用のWebサイトを通じて、事例やソリューション・ガイドラインなどの情報を発信すること、ユーザー企業向けの情報発信、セッションや検討企業向けラウンドテーブルの開催、パートナー向けワークショップの開催などを挙げている。

発表にあたったSAPジャパン バイスプレジデント、ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 副部長、桐井健之氏は、IFRS支援室設立の目的について、「IFRS適用に向けた取り組みは、単なる制度対応ではなく、連結会計プロセスの一新や、ERPを中心とした経理業務システムの複数帳簿対応、グループ内の統一アカウンティング・ルールの標準化など、企業の経営戦略に応じたさまざまなレベルの支援が求められる。IFRS支援室の設立によって、海外を含む多くの事例やノウハウ情報を一元化し、支援レベルの質的向上を図る。また、ユーザー企業やパートナー企業と連携して、情報共有、共同研究を展開し、IFRS対応を検討する顧客の声を製品機能や各種施策に反映させる」と説明。SAPのユーザー会「JSUG」や日本CFO協会、パートナー各社と連携しながら、SAP自身の経験や既存ユーザーの経験を共有・発信していくことを強調した。

SAPジャパン ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 GRC/EPM事業開発部 部長、中西正氏

SAPが提供するIFRSソリューションとしては、日々の経理・会計業務支援を行う「SAP ERP Financials」と、連結決算開示にかかわる連結管理を支援する「SAP BusinessObjects Financial Consolidation」がある。もっとも、IFRS対応においては、会計・財務や連結決算分野での対応にとどまらず、経営戦略の立案から実行までを含めたさまざまな課題にも対応していくことが求められる。桐井氏によると、そうしたさまざまな分野を含めて、包括的なソリューションを提供できることがSAPの強みの1つという。

例えば、同社はこれまで、英国の酒造大手ディアジオや、スイスのヘルスケア企業ロシュ・ダイアグノスティックス、フランスの製薬会社サノフィ・アベンティスといったグローバル企業のIFRS対応を支援してきた実績を持つ。その数は、連結決算ソリューションで800社超(制度連結、財務報告の導入実績)、基幹システム対応支援で4,000社以上(ERP GLの導入実績)であり、SAP自身も、2004年にIFRS導入プロジェクトを開始し、2008年にIFRSベースの会計報告を開示するなど、IFRSに取り組んできた。

パートナーとの連携については、同日開催されたセミナー「SAP IFRS Conference」で、SAPジャパンを含めて12社のソリューションが紹介された(アビームコンサルティング、日立製作所/日立コンサルティング、アウトルックコンサルティング、富士通、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス、アイ・ティ・フロンティア、T4C、アクセンチュア、デロイト トーマツ コンサルティング、TIS、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント)。

なお、SAPが提供するIFRSソリューションのアプローチと具体例については、ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 GRC/EPM事業開発部 部長、中西正氏から解説があった。同氏によると、IFRS対応にあたっては、複数の会計基準に対応することが基本となる。これは、IFRS適用後も税法や会社法に対応するため、日本基準での個別財務諸表作成が求められるからだ。

IFRS対応における、複数会計基準を視野に入れた単体決算の流れ

そして、複数の会計基準に対応するうえでは、帳簿の持ち方(ベースとなる基準をどれにするか)で、3つのパターンに分けられる。1つ目は、ローカルGAAP(日本基準など)で記帳し、IFRSの表示科目に組み替えるパターン。2つ目は、IFRSで記帳し、ローカルGAAPの表示科目に組み替えるパターン。3つ目は、IFRSとローカルGAAPそれぞれの元帳に記帳するパターンだ。

複数会計基準に対応するうえでは、帳簿の持ち方で3つのパターンに分けられるという

SAPでは、1つ目については、ローカルGAAPによる個別財務諸表をIFRSに組み替え、さらにIFRSに準拠した連結処理を行う方法によって、2つ目については、1つの元帳に組み替え用の仕訳を合わせて転記し、出力時に複数基準での帳票を作成する方法によって、3つ目については、元帳を複数用意して、複数の会計基準に対応した簿価を保持する方法によって、それぞれ対応することが可能という。いずれも、SAPソリューションの機能として提供されているものだ。

そのほか、IFRSで求められるセグメント別の情報開示などについては、伝票転記と同時にリアルタイムでセグメント別のレポートを更新する仕組みなどがあること、Webサイト「SAP Service Marketplace」で法要件の変更に合わせた情報提供(製品ドキュメントの追加など)が行われることを紹介した。