低予算でCG映画を製作できた秘訣とは
チャンスを掴み、映画を作れるようになったのだが、その製作費はCG映画を作るにはとても十分とは言える金額ではなかったようだ。
「この映画の総予算は600万円でした。はっきり言ってこの金額はCGを用いた映画作品が作れる金額ではありません。映画の予算は、主に作品を作るための制作費と宣伝費のふたつに分けられます。予算が潤沢にある場合は、金額を半々にするのですが、今回はそれでは映画が作れないので、100万円のみ宣伝費にまわしました」
この映画の総カット数は660カット。撮影は6日間しかなく、平均100カット以上毎日撮影していかなければいけなかった。そこで監督は、撮影現場で効率的に撮影していくため、とある工夫を凝らした。
「時間のない中で、作品を撮らなくてはいなけい場合、やはり絵コンテが重要になってくると思います。例えば、撮影現場でカメラの位置を変えると、照明やマイク、役者の立ち位置まで、全てを変えなくてはいけません。そうすると機材の移動だけで、最低でも30分~1時間かかってしまいます。しかし、この作業を絵コンテ上で行えば、消しゴムひとつで変えることができます。それだけの労力なんです。だから僕は絵コンテを全て事前の用意しました」
松田監督の絵コンテ。自分のイメージした絵とまったく同じ映像が撮れることは少ないが、このシーンはパーフェクトだったとのこと |
グリーンバックで撮影する際に、白い衣装だとグリーンが衣装に写り込むため、それを防ぐ工夫として板を設置しているとのこと |
松田監督は、絵コンテを演者のみならず、照明などのスタッフにも渡した。そうすることにより、スタッフと撮影したい映像のイメージを共有でき、撮影現場でのスタッフの動きも早くなったという。ほかにも、通常、撮影1カ月前から参加する助監督などのスタッフを撮影1週間前まで入れなかったこと、ロケ地の下見や申請、スタジオ探しなども監督自ら行ったこと、撮影に使う小道具も自分で制作したこと、撮影したスタジオが、ムービースタジオではなく、フォトスタジオで、雑音がひどかったので音声をアフレコで入れたこと、取りこぼした映像をCGで作りあげたことなど、制作費を安く仕上げるための制作秘話を語った。
松田監督は低予算で映画を製作するためには、入念な準備と緻密な計画立て、現場に挑むことが大切であると語った。また予算が少ないからと言って、"撮影できないから諦める"、"お金がないから諦める"と何事もやる前から諦めるのではなく、まず頭の中を整理して考えてみることが重要だと訴えた。
講演の最後、松田監督は聴講したデジタルハリウッドの生徒たちに対し、映画を作りたいのであれば、自ら行動を起こすことが重要であると語った。
「人生はやるかやらないかのどちらかしかありません。やると決めたら、とことんやって下さい。チャンスは必ず巡ってきます。もし、チャンスがないなと思ったら、それは自分がチャンスを逃してるんだと思うことが大切です。映画を撮りたいと思ったら、自主映画を撮るなど、行動を起こさなくてはいけません。ただ映画を撮りたいと思っているだけでは駄目です。やりたいと思っていることを、声に出すことや、自分で行動することが大切なのです」
映画『エレクトロニックガール』は、9月12日より、渋谷シアターTSUTAYA他、順次公開予定。