米Freescale Semiconductorの日本法人であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは9月9日、同社のプライベートショー「Freescale Technology Forum Japan 2009(FTF Japan 2009)」を開催。併せて、デンソー、TRW Automotiveの3社が、自動車のエアバッグシステム用通信バス規格「DSI(Distributed Systems Interface)」のアップデート版「DSI 2.5」を発表したほか、開発強化と普及を目指し「DSI Consortium」を設立したことを発表した。

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン マーケティング本部 オートモーティブ マーケティング 部長の遠藤千里氏

DSIは、中央のECUと各部位に置かれたセンサ(サテライト)を2本のワイヤハーネスにより、双方向通信を行うと同時に電源を供給することが可能なシステム。「現在はエアバッグ向けの規格だが、将来はアクティブセーフティと連携しても使われると考えられる」(フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン マーケティング本部 オートモーティブ マーケティング 部長の遠藤千里氏)としている。

DSIについての説明は昨年のFTFJ 2008の記事を読んでいただければと思う。2008年時点のDSIのバージョンは2.02、今回は2.5に引き上げられたわけだが、何が変わったかというと、「これまで3社の間のやり取りだけだったために、各社の記述がまちまちで統一が取れていなかった。今回はコンソーシアムの設立により、幅広く世に公開することとなるので、それらの記述方式などを共通化した」(同)とのことで、性能面での変更は行われていないという。

DSIのECUとサテライトの接続イメージとブロック図(サテライト側からMCUに信号を転送。その命令により、Squibを経由してエアバッグが発動する)

DSIを採用した自動車メーカーやOEMメーカーは、すでに全世界で半導体メーカーが2社(Freescaleと欧州系半導体メーカー)、自動車メーカー(ティア1)が6社、そしてOEMメーカーは10社以上におよぶという。「コンソーシアム化により、エコシステムの拡充をはかり、製品の双方向の接続性の確保などを進めていく」(同)とするほか、仕様を公開していくことで、拡張をはかり、プロモーションを推し進めることで、趣旨に賛同してもらえるメーカーを広く募っていくとする。

DSI Ver2の基本仕様と物理レイヤの動き(センサ側で電流の高低の変化を用いて制御する。また、波形が生じていない部分では電力が供給される仕組みになっている)

また、DSIのバージョン3.0については、「2009年12月をめどにドラフトを3社で作成。2010年第2四半期の仕様公開を目指してコンソーシアムのメンバーとともに協議を重ねていく予定」(同)であり、通信速度の向上や低コスト化、EMI耐性の向上などを図り、エアバッグ以外の使い方も模索していくとする。

同発表会に参加したデンソーの走行安全技術3部 部長の石川幸司氏は、「エアバッグは今後、搭乗者への安全要求の高度化に伴い、確実に増えることが予測される。新興国でも搭載に向けた動きが進んでいくはず。コンソーシアム化により、より高性能かつ低コスト化を実現したECUやサテライトの製造を行っていく」とコメントしたほか、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの車載事業担当ジェネラルマネージャの林章氏は「本来、ライバル関係にある3社がコンソーシアムを形成した意義は大きい。すでに第1世代からDSIは全世界で2億5,000万台出荷されている。この中心は日本で、こうしたものを採用してくれたことが日本の自動車の安全性、信頼性につながっている。今後、環境と安全の両立を図っていくために、我々としても日本の自動車業界の発展に貢献していきたい」とした。

さらに、TRWオートモーティブジャパンの代表取締役である四元伸三氏は、「今後、自動車が大きく変化していくが、産業が発展していくためには、安全と環境を意識することが重要。コンソーシアムの設立によりTRWのアクティブ、パッシブ双方のセーフティ関連のノウハウにデンソーの日本品質が入ったのは非常に意味深い。コンソーシアムの発展に向けて、新しい規格をみんなで作っていきたい」との抱負を語った。

コンソーシアムの発展に向け握手を交わす3社(左から、デンソー石川氏、フリースケール林氏、TRW四元氏)