一般用医薬品のネット販売を規制する厚生労働省の省令について、ケンコーコムが国を相手取り、医薬品ネット販売の権利確認と省令の無効確認・取消を求めた訴訟の第2回口頭弁論が1日、東京地方裁判所で行われた。

省令は、「薬事法施行規則などの一部を改正する省令」で、改正薬事法で定める「第1類」「第2類」「第3類」の医薬品に関し、「第1類」「第2類」の医薬品のネット販売を規制する内容となっている。同省令には緊急措置として、離島居住者や以前からの継続使用者に対して、伝統薬などの薬局製造販売医薬品と第2類医薬品の通信販売(ネット販売含む)ができるようにする経過措置が盛り込まれた上で、6月1日に施行された。

経過措置を含めて同省令に反対するケンコーコムは、省令施行前の5月25日、日本オンラインドラッグ協会会員で医薬品・健康食品ECサイト「健康食品店ウェルネット」を運営するウェルネットとともに、医薬品ネット販売の権利確認と省令の無効確認・取消を求める訴訟を、国を相手取り東京地裁に提起した

第1回口頭弁論で原告側「規制の根拠ない」と主張

7月14日に東京地方裁判所で開かれた第1回口頭弁論では、ケンコーコムら原告側の意見陳述が行われた。意見陳述では、以下の点などについて指摘した。

  1. 省令の根拠は、医薬品の副作用・誤使用防止のために、ネットではなく「対面販売」で、顔を合わせて情報を十分に提供することが必要だとしているが、ネット販売に起因する副作用のリスクは何ら実証されておらず、規制の根拠がない

  2. 薬事法では、購入者が情報提供が不要であると言えば、1類の医薬品でも情報提供を省略して売買ができると定めてあるにもかかわらず、省令では、対面の販売を原則とし、消費者が(対面での説明は不要で)ネットやメールでの説明のほうがいいと言っても、安全性の確保ができないとして禁止されるのは、消費者の自己決定権を侵害するものである

  3. さまざまな事情で薬局・店舗に行くことが困難な消費者にとっては、ネットは医薬品購入のための極めて便利な手段であり、ネット販売禁止は、かえって必要な医薬品の入手を困難にして、その健康と生存を脅かす危険な規制である

  4. 法治国家では、国民の権利を制限するには憲法に適合した法律が必要であり、法律より下の政省令で定める場合には、その法律(から)の具体的な授権が必要である。しかし薬事法36条の6は、情報提供などについて定めることを省令に委任しているだけで、どこにも対面の原則を規定していない。従って、今回の省令は法律の授権を欠き、憲法第41条に違反する

その上で、「求釈明(質問への回答を求める)」として、「6月1日以降も店舗における対面販売で情報提供に格段の変化は見受けられないが、厚生労働省としてどのような取締りを行わせる予定であるか」「一部の会社が『特例販売業許可』を利用して全国に向け医薬品の通信販売を行っていることについて、厚生労働省は脱法行為と考えているのか否か」などの質問への回答も求めていた。

この質問に対し、厚生労働省の側では8月10日に、「特例販売業の許可を取得している会社が、許可を受けた範囲を超えて、郵便など販売のように広く医薬品販売を行う場合は、特例販売業の許可の趣旨に反するので、都道府県の判断により、行政指導、また必要に応じて改善命令もしくは業務停止命令または許可の取り消しの対象になる」などと回答を送付した。

厚労省は「規制はどうしても必要」と反論

一方厚生労働省では8月21日、ケンコーコムらの意見陳述に対する反論を記した「準備書面(1)」を原告側に送付した。法務省行政訟務課によると、同書面では、以下のように記されている。

  • 省令は、医薬品の適切な選択と適正な使用の確保、国民の健康被害を防止する目的となっている。医薬品にはリスクが不可避であり、できるだけリスクを回避するためには、医薬品に関する専門家が関与して販売することが重要である

  • 現状を見ると、専門家が不在であったり、適切な情報提供が行われていない。購入者においても、医薬品に関する適切な知識を持っているとは限らない。

  • こうした実態に鑑みると、販売業者に専門家を関与させリスクの比較的高い医薬品に関して対面で情報提供を義務付ける規制がどうしても必要である。(省令により)規制をすることは合理的な制約であり、憲法22条(職業選択の自由・営業の自由)には違反しない

その後、8月30日に、原告側から、訴状を補完をするための「準備書面(2)」を被告に送付した。