非常に厳しいことで知られる米国の入国審査だが、同時多発テロのあった2001年以降は運用ルールがより厳しくなり、入国審査官が怪しいと判断した場合は旅行者の同意なく荷物検査を行うだけでなく、手持ちのノートPCや携帯電話などを没収し、データをコピーしての詳細検査などが行われていたことが報告されている。米国内でのテロ活動防止の名目があるとはいえ、こうした活動はプライバシーの観点からも行き過ぎだという批判が多く、オバマ大統領政権では運用ルールの緩和に踏み切った。米Associated Press (AP通信)が8月27日(現地時間)に報じている。

改訂された新ルールでも旅行者の電子機器(PCや携帯など)の調査は引き続き行われるものの、調査官が5日以上機器を預かる場合には事前の同意が必要になった。またコピーしたデータを保持することは禁止されており、7日以内の廃棄が義務付けられている。調査官が電子データにこだわる理由は、スーツケースの中身を調べるよりも、その旅行者の素性や行動がより詳細にわかるからだ。だが一方で企業の機密データや取引上の漏洩禁止事項、医療データ、報道関係者の取材データなどが無断で米国政府によって持ち出されることは、個人のプライバシー侵害以前に企業活動の妨害や国際問題にも発展しかねず、市民団体や旅行者からはたびたび抗議を受けていた。

新ルールでは、次のような形での調査が義務付けられる。

  • 調査監督者は調査中には必ず立ち会うこと
  • 入国管理室が電子データや情報を保持できるのは犯罪に直結すると判断したときのみに限る。だがそれらを保持し続ける法的理由はなく、7日以内の廃棄が求められる
  • もし旅行者の取り扱いに注意すべき情報、たとえば医療データや法律で認められたもの、あるいは報道関係者の業務上のデータの閲覧の必要がある場合は、担当弁護士に判断を仰ぐ
  • ケースによるが、このようにして預かった荷物を30日以上保持してはならない

機密データの扱いに関するルールがきちんと制定されたのが今回の決定だが、電子フロンティア財団(EFF)の弁護士であるMarcia Hofmann氏によれば、前進ではあるもののまだまだ不十分だという。「以前としてデータの無断コピーや荷物検査は同意なく行えるようになっており、これらは事前に通知すべきであり、現状では旅行者らが検査の内容を知る術はない」とコメントしている。