作業の流れがわかりやすいインタフェース
自分が考えたシナリオで、デジタルノベルやアドベンチャーゲームを作ってみたい! そんなユーザーの願いを簡単に実現してくれるツールが、今回紹介するデジタルノベル制作ツール「らのべえ」だ。本製品は文章、グラフィック、音声などを組み合わせていくだけで、ライトノベル風のデジタルコンテンツを簡単に制作できる。
本製品は「誰でも気軽に作れる」というコンセプトのもとで開発されただけあり、ややこしいプログラム技術はまったく必要ない。制作するゲーム内のシーンは、すべて「ノードスクエア」と呼ばれる四角いボックスで表現される。たとえば「ヒロインが登場するシーン」とか「物語の説明シーン」など、ボックスは自由に配置可能だ。
ある程度シーンを配置したら、今度はそれらのボックスを線で繋げていく。ボックスをつなぐ線は物語の進行方向を表しているため、ボックスを接続する順番によって物語の展開が変化する。フローチャートを見ながら視覚的にストーリーを考えられるので、とても使いやすいツールだ。納得がいくまで物語を考えたら、最後に「リリース」コマンドを実行してゲームファイルとして保存。最初から最後まで簡単な操作でゲームが完成する。
四角いボックスがノードスクエアと呼ばれる1シーン。これらを進行順に線で連結させていくだけで、シナリオを完成させられる |
1本道のシナリオだけでなく、アドベンチャーゲームのように物語が複雑に分岐するコンテンツも作成可能 |
「ゲームをリリースする」というコマンドを実行すると、使用したアイテムや音楽などをパッキングした1本のゲームが完成する |
ノードスクエアのなかにセリフや表示アイテムを埋め込む
おおまかなシナリオ進行が制作できたところで、次にノードスクエアの中身がどうなっているかを解説しよう。じつはノードスクエアの中身もノードスクエアの集合体で、入れ子構造のようになっているのだ。ゲーム画面を構成するためのコマンドがボックスのなかに格納されていて、それらを順に繋いでいくことで、ひとつのシーンが構成される。たとえば、ひとつ目のノードスクエアで背景画像を表示し、ふたつ目のノードスクエアで音楽を再生。さらに、その次のノードスクエアでキャラクターの画像を表示し、最後はキャラクターのセリフテキストを表示する、といった動作をステップごとに並べていきながら、ひとつのシーンを完成させるのだ。文章で説明するとややこしく感じるかもしれないが、作業自体はボックスを並べるだけなので、パズルのような感覚でゲーム制作を楽しめる。
ひとつのノードスクエアをクリックすると、1シーンの細かな設定画面が表示される。設定画面もノードスクエアの集合によって構成されているため、操作に戸惑うことがなく一連の流れを理解しやすい(左、中央)。このシーンでは、背景画像を表示→音楽を再生→メッセージウインドーを表示→メッセージを表示→メッセージウインドーを消去→次の背景画像を表示という順でノードスクエアが並べられている(右) |
画面の表示方法についても、フェードインや右から左へスライドインさせるなど、用意されているプリセットから選択するだけ。もちろん表示にかかる時間なども選択可能。ちなみにこのシーンは300msでフェードイン表示するという設定になっている |
サンプル画像付きなので素材を用意する必要がない
デジタルノベルやアドベンチャーゲームを作る場合、もっともハードルが高いのはおそらく「かわいいイラスト」だろう。素人にセンスのいいイラストを描けというのはムリな話。しかし本製品にはあらかじめ有名イラストレーターが描いたキャラクターや背景などのイラストが用意されているため、絵がまったく描けない人でも、収録されたイラストを使いゲームを作ることができる。
バストアップ、背景、イベントシーンなど、様々なサンプルデータが用意されているため、これらを使えば自分で素材データを作る必要もない。サンプルの画像は有名イラストレーターの「魚」、「蜜桃まむ」、「鈴井ナルミ」が手がけている |
ボイス作成機能で「萌えセリフ」をしゃべらせる
最近のアドベンチャーゲームでは標準となっているボイス機能も実現することができる。本製品には音声を人工的に作成する機能「萌えボイスシステム」が搭載されており、しゃべらせたいテキストを指定するだけで簡単に音声を生成可能となっている。この萌えボイスシステムには、人工音声システム「SpeeCAN」が採用されているため、アクセントや話すスピードなどを細かく設定できる。ただし、この機能は多少クセがあるので、慣れるまではロボットボイスのような声になってしまうだろう。声の大きさや、長さ、周波数などを細かく調整すれば、人間の会話に近いものを作成できる。ちなみにこの音声データには、声優・直木萌美さんの声が採用されている。
動画共有サイト向け? 制作したゲームをムービーとして書き出せる
本製品のおもしろい機能のひとつとしてムービー出力機能がある。これはゲームとして実行ファイルを出力するだけでなく、作ったゲームの動作中の様子をムービーとして出力できるというもの。ムービーとして保存する場合は、まずデバッグモードを起動し、「R」キーを押し設定画面を表示させる。設定画面ではフレームレートや音声の圧縮レートが指定できき、「OK」のボタンを押せばキャプチャーがスタートする。ゲームのプロモーションムービーをYouTubeなどの動画共有サイトにアップロードする場合には非常に便利な機能だ。
音声レートやフレームレートの設定が可能。動画の圧縮コーデックについてはOSにインストールされているVideo for Windowsの環境に依存する |
再度Rキーを押すとキャプチャーが終了し、ファイルが保存される |
次回は、実際に本製品でライトノベル制作に挑戦していく。