マイクロソフトは、Webデザイナーや、インタラクティブデザイナーを対象とし、同社のソフトウェアや、Webサービスに関するカスタマーユーザーエクスペリエンス(UX)への取り組みを紹介するイベント「ReMIX Tokyo 09」を東京ミッドタウンにて開催した。

会場には、約1,000名もの参加者がブレイクアウトセッションに参加するために列を作った

同イベントは、マイクロソフトのデベロッパー・プラットフォーム・コーポレート・バイスプレジデントであるスコット・ガスリー氏が司会を務めたキーノートからスタート。キーノートに続くブレイクアウトセッションでは、Silverlightを使ったコンテンツ制作を初歩から教えるセッションや、「Live Services」のTipsを紹介するセッション、Webオーサリングツール「Expression Web 3」の利点を紹介するセッションなど、様々なプログラムが用意された。今回は、キーノートと、3つのブレイクアウトセッションの様子をレポートしていく。

キーノート

国立大学法人大阪大学大学院工学研究科教授・川崎和男氏

マイクロソフトのデベロッパー・プラットフォーム・コーポレート・バイスプレジデントであるスコット・ガスリー氏

スコット・ガスリー氏の挨拶から始まったキーノートでは、最初にスペシャルゲストとして国立大学法人大阪大学大学院工学研究科教授・川崎和男氏が登場、「コンピュータが消える日」と題したプレゼンテーションを行った。川崎氏は同プレゼンテーションで、デジタル・コンテクストからの予知として、Gordon More、Paul Vixie、William J. Mitchellの3名のキーマンと彼らのPCにまつわるエピソードを紹介した。またスコット・ガスリー氏は、Silverlightが身近なWebコンテンツに利用されている例として、先日亡くなったマイケルジャクソンの追悼式やテニスのウィンブルドン選手権の中継にSilverlightが利用されたことを紹介した。そのほか、マイクロソフトのデベロッパービジネス本部デザイナー製品部マネージャー・春日井良隆氏はmediaとRIAのふたつの側面から「Silverlight 3」の新機能について説明。そのなかで、Silverlightを利用したコンテンツの事例として、ヤフーのR&D統括本部フロントエンド開発本部・中村亮氏と伊藤陽氏や、SBIリクイディティ・マーケットのIT統括部マネージャの中村秀博氏も登場し、それぞれ自社のWebコンテンツを紹介した。

Expression Blend 3で作る、はじめてのSilverlight

マイクロソフトのUXエバンジェリスト・神原典子氏

マイクロソフトのUXエバンジェリスト・神原典子氏は、Expression Blend 3を用いて、Silverlight 3のコンテンツを制作する方法を紹介。架空のWebサイトを制作しながらステップ バイ ステップ形式で初歩の段階から丁寧に説明していった。また使いやすいWebサイトを構築するためには、早い段階からエンドユーザーの視点から検証を行い、問題点を潰していく、ユーザー中心設計が有効であると説き、実際にマイクロソフトの新OSであるWindows7の開発では、300人以上のユーザからタスクバーをどのように使用しているかなどの調査・検討しながら制作していったことを明かした。

架空のグループ「Remix Group」のサイトを構築していく様子

Expression Web 3と注目の "SuperPreview"

Webサイト制作会社であるアンカーテクノロジーの神森勉氏

約5割の参加者がデザイナーであった同セッションでは、Webサイト制作会社のアンカーテクノロジー・神森勉氏が登壇。「Expression Web」の便利な機能として、強力なCSS作成環境や、「Snapshot機能」を使用することによりIE6以降またはFirefoxの表示をブラウザを立ち上げることなく確認することができる点、開発環境がExpression Webをインストールすることによって自動的にインストールされる点などを挙げた。メインテーマである「SuperPreview機能」については、同時にふたつのブラウザを表示し、OSやブラウザに関係なくデバックを行うことができる点など、利用するメリットをデモも用いながら分かり易く紹介した。

SuperPreview機能により、2種類のブラウザを、横や縦に並べて表示できるほか、重ねて表示することも可能だ

バスキュールが制作した「SilverlightのWindows 7ユーザ コミュニティサイト+CGM ブログパーツ」の開発秘話

セッションに登場したバスキュールの澤井宏和氏(右)と和田教寧氏(左)

マイクロソフトのユーザー参加型・オンラインコミュニティプログラム「I Run Windows 7」を制作したバスキュールの澤井宏和氏と和田教寧氏は、同プログラムの開発工程を紹介。同プログラムのポイントとなるチャートを制作するにあたり、「Windows 7」の「7」にちなみ、快適さ、使いやすさ、美しさ、楽しさ、先進性、安定性、互換性の7つの項目でWindows 7を評価するシステムを構築したことを語った。また同プログラムを「Silverlight 2」を用いて開発していくなかで、同じ文字サイズの黒文字と白文字をブラウザ上で比較した際に、白文字がやや太ることを発見。その対応策として、回転を0.000001加えることにより、文字が太らなくなることを突き止めたという。そのほか、同プログラムの開発が、同社ではSilverlightを用いた初めてのコンテンツ制作であったことを明かした。

ひとつのチャートを制作するために、いくつものレイヤーを重ねていることがわかる

同イベントには、多くのデザイナーや、クリエイターが参加し、なかでもスコット・ガスリー氏や川崎氏が登場したキーノートは立ち見が出るほどで、Silverlightに対するクリエイターたちの関心の高さが伺えた。マイクロソフトは、同イベントでWebコンテンツの開発者のみならず、デザイナー、クリエイターに対してSilverlightをアピールしたいと考えており、その目的は見事に達成されたことだろう。なお、同イベントのキーノートやブレイクアウトセッションの模様は、 8月中旬頃からオンデマンドで配信される予定となっているとのこと。

(人物撮影:糠野伸)