Ericssonの元CTOで、現在はシニアバイスプレジデント兼シニアアドバイザーのJan Uddenfeldt氏。同氏が率いるインターネットとの融合を見据えて設立したシリコンバレーオフィスでは、米Google、米Intelやベンチャー企業、大学と共同研究などを進めているという

米Appleや米Googleなど、他の分野の技術企業がモバイル分野に事業を拡大しはじめており、いよいよ通信とインターネットの融合が本格的にはじまりつつある。無線通信機器ベンダ最大手のEricssonは、どのような戦略で新しい時代に挑むのか。Ericssonが6月23日から2日間、スウェーデン本社で開催した「Ericsson Business Innovation Forum」にて、シリコンバレーのEricssonオフィスを率いるJan Uddenfeldt氏が語った。

Uddenfeldt氏は5年前にCTO職を離れ、最新技術動向を追いながらCEOにアドバイスする立場にある。Ericssonの戦略において、重要な役割を果たす。

Uddenfeldt氏はこの日、シリコンバレーで開発中のモバイルエコシステム、それにEricssonが全社レベルで進めるコンバージェンスの2つの取り組みを紹介した。

モバイルエコシステムでは、業界に水平型の仕組みをもたらすことがEricssonのアプローチとなる。

現在、モバイル業界では垂直型モデルが成功し、トレンドを傾向しつつある。好例がAppleだ。Appleは「iPhone」で、OS、端末、アプリケーションストアと垂直型ビジネスをとる。Uddenfeldt氏は、「iPhoneはモバイル業界に良い影響を与えた」と評価し、なかなか離陸しなかったモバイルアプリケーションを大きく変えた、と続ける。その結果、ネットワークのトラフィックは急増し、データ時代の幕開けにつながった。Appleの成功に倣おうと、Nokia、Googleなどが多少の差はあるものの同じようなモデルを築こうとしている。Nokiaは「Ovi」を、Googleは「Android」を、カナダResearch In Motion(RIM)や米Microsoftもアプリマーケットを構築中だ。

だが、このような垂直型サービスが複数存在する場合、相互運用性の問題が生じる。アプリケーションがさまざまな端末上で動かず、相互運用性とともに問題となっている。

これを解決するものとして、Uddenfeldt氏はEricssonのマルチメディアブローカーとアプリケーションストアソリューション「Ericsson Application Store」を紹介した。

ブローカーはアプリケーションプロバイダとオペレータの間に入るもので、課金、メッセージングなどの機能を提供する。標準をベースとしマルチスクリーンに対応するEricsson Application Storeと併用することで、同じアプリケーションをさまざまなオペレータのネットワーク、さまざまな端末の上で動かせる。

端末ベンダがアプリケーションを開設する中、オペレータも開設する必要があるとUddenfeldt氏。相互運用性により、アプリマーケットビジネスにおいてオペレータの立場を優位にできるという。

エコシステムではこのほか、モバイル広告「Ad Broker」と「Ad Orchestrator」も展開している。広告ブローカーとしてさまざまな広告企業と技術を結びつけることができるもので、すでにオペレータ4社がこれを利用して広告を提供しているという。

固定とモバイルの両ブロードバンドを通じさまざまなものが接続するコンバージェンスでは、Ericssonのモジュール事業の動向に触れた。携帯電話加入者40億人時代を時代を迎える中、Ericssonではその先として、2020年には500億台の端末がモバイルに接続する時代をにらんだイニシアティブを開始している。

ここでは、ネットワークに接続するのは携帯電話だけでない。カメラ、GPS端末、ゲーム機などの端末にもモジュールが入る。そのためには、モジュールの小型化と量産による価格低下が必要だ。Uddenfeldt氏は、今年にもモジュールのボリューム化が実現するとの見通しを示す。

Ericssonではまた、消費者家電がモバイル業界に入る時代を見据えて、ST-Microと合弁子会社 ST-Ericssonを立ち上げている。Ericssonのモバイルプラットフォーム技術とST-Microの無線事業部が合体したチップセット企業で、現在、Sony Ericsson、Nokia、シャープ、Samsungなどの携帯電話メーカー、ノートPCでは東芝、Lenovoなどのメーカーに供給している。

一方、ネットワーク機器側では、オールIP/IPコンバージェンスに向けた動きがはじまっている。モバイル用、固定用と別に設置されたシステムが、IPを土台に統合されるというものだ。モバイルと固定が同じメトロトランスポートを利用し、両方に対応するルータ機能を持つコンバージドゲートウェイ経由でコアトランスポートにアクセスする。

Uddenfeldt氏によると、2010年に商用化がはじまるとみられるLTEがこの動きを進めているという。たとえば、EricssonがVerizonから獲得したLTEの契約では、コンバージドゲートウェイなども含まれているという。

「インターネットの進化とモバイル通信の進化、これがモバイルインターネットとして発展している」とUddenfeldt氏。「モバイルとインターネットは同じ方向に向かって進化する」と述べた。