日本オラクルは6月30日、2009年5月期(2008年6月1日 - 2009年5月31日)決算および2010年5月期の見通しを発表した。世界的金融不況の影響で生じた企業のIT投資抑制の流れを免れることはできず、売上、利益ともにほぼ横ばいを保ちながらも、主力となるデータベース、ビジネスアプリケーションの売上が減少、2010年の見通しもきびしい内容となっている。

2009年度の決算概要

同社の発表した2009年5月期の決算概要は以下の通り(カッコ内は前年比)。

売上高 1,157億8,800万円(1.5%)
営業利益 388億7,700万円(0.4%)
経常利益 390億3,000万円(-0.3%)
当期純利益 227億4,000万円(-1.3%)
1株あたり当期純利益 178.94円(前年181.47円)

日本オラクル 執行役 専務 最高財務責任者 野坂茂氏

説明を行った日本オラクル 執行役 専務 最高財務責任者 野坂茂氏によれば、売上、営業利益は過去最高の数字となったものの、データベースおよびミドルウェアの売上が347億6,500万円で前年比マイナス14.7%、ビジネスアプリケーションの売上が57億7,500万円で前年比マイナス10.1%というきびしい数字を記録、しかしアップデートおよびプロダクトサポートが585億4,900万円で前年比16.5%増となり、かろうじてソフトウェア部門での売上増を達成した。サービス部門ではエデュケーション(25億3,400万円)およびコンサルティングサービス(112億4,700万円)ともに前年を下回る売上となったが、「Oracle On Demand」に代表されるアドバンストサービスが前年比38.7%増の29億1,500万円という数字をあげ、こちらも前年とほぼ横ばいの売上を達成した形だ。

売上原価および販管費については、昨年の本社ビル移転や買収企業の製品・人員増に伴い、同社のビジネス環境が大きく変わったが、販管費は前年とほとんど変わらない260億円、「関連製品が増えたため、ロイヤリティと人件費が増加」した売上原価は16億円増の508億円となっている。

1株あたりの配当金額は170円。前年は173円で、今期も同じ金額の実施をもくろんでいたが「きびしい経済状況を受け、金額を下げざるを得なかった」(野坂氏)と苦しい表情だ。

2010年度の予想

景気が好転する兆しはやや見え始めているものの、いまだ底を打った感はない。顧客企業のIT投資は依然低い水準にあり、ソフトウェアビジネスを本業とする同社にとって、2010年もきびしい状況は変わらないという。

2010年の売上予想は、ソフトウェア関連では3.5%増の1,026億円、サービスでは1.8%減の164億円、合計で今期比2.8%増の1,190億円としている。データベースビジネスは引き続き苦しい戦いが続くが、11gへのリプレースが進むことへの期待や、旧BEA関連ポートフォリオでの増収を見込んでいる。エデュケーション/コンサルティングに関しては、需要の冷え込みから今期よりさらにきびしい数字を予想している。

営業経費に関しては、今期実績よりも20億円ほど上乗せした790億円としている。これは「ライセンス事業に関しては現在、低い水準で収着しているので、もう少し高い水準に上げるべく、その分野の人件費増を見込んでいる。社員を増員するわけではない」(野坂氏)という。

1株あたりの純利益は182.55円を予想しているが、配当金は今期と同じく170円のまま。野坂氏は「現在も不透明な社会情勢が続くため、ある程度の留保が必要と判断」したことによる。

伸ばしたいのは"製品提案力" - 遠藤社長

日本オラクル 代表執行役 社長 最高経営責任者 遠藤隆雄氏

「この1年で大きな荒波を経験した。オラクルも、お客様をとりまく環境も大きく変わった」と同社 代表執行役 社長の遠藤隆雄氏は振り返る。来る2010年度に向けて遠藤氏が掲げた抱負のひとつが「営業の製品提案力の強化」だ。2009年度は「顧客志向の営業体制に再編できた。営業案件というのは顧客との強い関係から生まれてくるもの」と遠藤氏は強調するが、2010年度はこの方針をさらに強化、「案件を見過ごすことない提案」を目指していくという。

また、ソフトウェア事業に関しては、データベース、ミドルウェア、アプリケーションの分野にそれぞれ責任者を置き、米国本社と密にやりとりする環境を作っているが、今後は本社とのパイプをさらに太くし、「11gおよびExadataの正しい価値訴求、旧BEA製品とFusion Middlewareとの統合、アプリケーションの日本語化促進」を重点的に行っていくとしている。

「ITといえば日本オラクル、とCIOやIT担当者の方々に思っていただけるパートナー」を目指すという遠藤氏。主力であるデータベースビジネスの飛躍的な伸びが期待できない中、保守/メンテナンスに頼ったフィービジネスだけでは顧客から見放されてしまう。遠藤氏のいう「顧客のニーズと時代の変化に迅速に対応できる製品提案力」が今期よりもより強く求められる。

遠藤氏が掲げた2010年5月期の重点施策。とくにExadataビジネスのドライブとアプリケーションの日本語化は遠藤氏肝入りの目標だ