--印藤公洋氏を日本のトップに迎えたのも市場の変化に迅速に対応するためですか。

我々は今後、最も成長する見込みが高い市場として3つを特定しています。英国、米国の連邦政府系ビジネス、そして日本です。これまで、日本市場はアジアパシフィックの1リージョンとして位置づけられていましたが、印藤氏を日本法人のプレジデントに置き、日本法人は直接、私にリポートするように変更しました。つまり米国本社との距離を縮め、より密な関係を築けるようにしたのです。それくらい、米国本社が日本市場を重要に捉えているということです。

印藤氏はビジネス・オブジェクツだけではなく、IBMやコンサルティング会社など、業界での経験が豊富で、日本のパートナーやSIerに関する造詣も深い。日本法人のトップとしてベストの人選だと思っています。米国本社の彼に対する期待は非常に大きなものがあります。

Zolfaghari氏も高い期待を寄せるマイクロストラテジー・ジャパン プレジデント 印藤公洋氏(5月20日の同イベントにて)

--日本市場を攻めていく上での課題はどこにありますか。

日本法人の営業体制は「3年で人員を3倍」にすることを目指しています。主に金融、製造、消費財、サービス業といったインダストリに注力することになるでしょう。このあたりは印藤氏と米国本社で連携を取りながら進めていく予定です。

もうひとつ、日本市場に浸透するためにはパートナービジネスを注意深く進めていく必要があると思っています。

ITに長けている企業は、IT部門の担当者が自社の状態をよく理解しています。社員のナレッジはどの程度なのか、各部門のITシステムがどういう状況にあって、どういう改善が必要なのか、といったことを把握し、会社の全体戦略とIT化のバランスを考慮した上で、パートナーや我々に相談してくるのです。

ところが日本企業の場合、プロダクトへの依存、そしてパートナー企業への依存が非常に高いという点が目立ちます。BIとは本来、導入する側の企業がしっかりと本質、目的を理解していなければならないソリューションです。にもかかわらず、「○○社の製品だから」「SIerの××が勧めるから」という理由で導入を決めてしまうケースがまま見られます。これは米連邦政府のケースと非常に良く似ています。政府機関にべったりと張りついているパートナーがいて、年間350億ドルを超える膨大なITコストを投下していながら「コストを削減しなければ」という。我々はパートナービジネスも非常に重要視していますが、決してパートナーだけに任せることはせず、顧客のことをよく理解することに努め、パートナーとともに最適な提案をしていくようにしたいですね。

インタビューを終えて - 日本市場でのシェアを本気で狙い始めたMicroStrategy

元米国司法省検事というキャリアをもつZolfaghari氏。MicroStrategyでのキャリアは1999年から。2006年8月にグローバルセールス部門のトップに就任した

リサーチ会社のデータを引くまでもなく、BIへの関心度は非常に高い。Zolfaghari氏は「BIを使ってデータを分析し、価値を高められる企業こそが生き残れる」と語ったが、まさしくデータは生のまま置いておいても意味はない。分析して生かしてこそ、真価を発揮するものだ。きびしい経済状況にさらされているからこそ、日本企業もようやくデータ分析の重要性に気づき始めたのだろう。「他社と違って、顧客の満足度をいかに上げるかだけに注力してきたMicroStrategyだからこそ、BI製品としての完成度には自信がある」とZolfaghari氏は断言する。Oracle、SAP、IBMといった大企業と同じ市場で渡り合っていくためにも、日本市場の開拓は同社にとって必須だ。マイクロストラテジー・ジャパンを本社SVPである自らに直接リポートさせたところに、その強い決意が伺える。

日本市場での普及には、やはりブランディング、そして導入事例を増やすことがカギになってくるだろう。実際、日本法人の責任者である印藤氏は「とにかく使ってもらう機会を積極的に増やしていく」と宣言している。その取り組みのひとつとして、同社は6月25日、BI導入を検討しているエンドユーザ向けに「MicroStrategy Starter Kit」の提供を開始した。ライセンスは無料、年間保守費用(年間ライセンス料の9%)とコンサルティング費用(80時間/150万円)のみで小規模なBI環境を構築できる製品群である。

「モノは良いのに、なかなかその良さがユーザに伝わらない」という言い訳はビジネスの上で通用しない。品質が良いのなら、それをユーザに届けるところまでが企業の使命だ。米国や欧州で大きな実績を挙げてきたMicroStrategyが、本気で日本市場を"獲りにきた"と思わせられるインタビューだった。