感動ものでないエンターテインメント映画
江戸川乱歩が創造した不朽の人気キャラクター「明智小五郎」と「怪人二十面相」。この二人の対決を、斬新な世界観で描いた映画「K-20 怪人二十面相・伝」の監督と脚本を担当した映画監督・佐藤嗣麻子に話を訊いた。
――佐藤監督はこれまでもテレビドラマで江戸川乱歩の作品を何作か手掛けられています。今回の『K-20 怪人二十面相・伝』はとにかく江戸川乱歩の原典、北村想の原作にあるジュブナイル要素は残しつつも、大胆なアレンジがなされているのが印象的でした。
佐藤嗣麻子(以下、佐藤)「元々、制作のROBOTから映画化の依頼があったのですが、北村想さんの原作は長いのでそのままでは、映画化は難しいと思いました。ROBOTからの希望は『日本にない冒険物をやりたい』という話だったので、原作から映画になりそうな要素を抽出して、今回の物語を創りました」
――日本にはない冒険物といいますと、具体的には?
佐藤「『インディ・ジョーンズ』のような冒険物という事ですね。深いテーマがあるという作品ではなく、感動物でもなく、カラッとした爽快な映画という事です」
――この作品の設定は第二次世界大戦が起こらなかった「もうひとつの日本」となっています。敗戦による他国からの支配がないままの日本の姿は、とても新鮮でした。ビジュアルひとつとっても、スチームパンク的というか……。
佐藤「この映画の世界観は戦前までの文化を良く調べて描いたつもりです。戦争で失われたものも、戦争がなければ現在とは違う形で残り発展していたという考えで、世界を創りました」