2004年から開始した、エコポジティブ戦略の前身となる「スーパーグリーン戦略」では、あらゆる事業活動において、究極の環境配慮性を追求することを掲げ、環境保全に貢献する独自の環境技術開発を行う「スーパーグリーンテクノロジー」、環境性能の高い商品・デバイスの創出を行う「スーパーグリーンプロダクト/デバイス」、環境配慮性が高く、地域から信頼される工場の実現を目指す「スーパーグリーンファクトリー」、資源循環を促進する使用済み商品のリサイクルによる「スーパーグリーンリサイクル」、環境経営度を高める独自のマネジメントである「スーパーグリーンマネジメント」の5点から取り組んできたが、エコポジティブ戦略での各テーマは、これを進化させたものとしている。

エコポジティブ・テクノロジーでは、薄膜太陽電池で2010年度を目標に変換効率10%を達成するとともに、堺工場の稼働による量産化。結晶太陽電池では変換効率20%を目標することで、薄膜/結晶太陽電池ともに発電コスト23円/kWhのグリッドパリティーの実現を目指すほか、家庭とオフィスと病院などを結んだ環境とICTが共生した社会の実現。太陽光発電、燃料電池、蓄電池などと、直流型省エネ家電による「DCエコハウス」の実現などがある。

「DCエコハウス」の実現

さらに、プラスチックの自己循環マテリアルリサイクルに取り組み、2009年度には1200トンの再生プラスチックを使用する。

シャープ執行役員環境安全本部・森本弘本部長

「マテリアルリサイクルに関しては、1999年度に技術開発を行い、2001年度から実用化している。2003年度には270トンの再生プラスチックの使用に留まっていたが、2008年度は1050トンを使用し、1000トンの目標を達成した。今後も回収素材の品質を高め、再生プラスチックの利用を増やしていく」(シャープ執行役員環境安全本部・森本弘本部長)という。

プラスチックの自己循環型マテリアルリサイクル

エコポジティブ・プロダクトでは、省エネ商品の創出として、液晶テレビ「AQUOS」において、過去5年間で最大72%という大幅な年間消費電力量の削減を行った例をあげたほか、LED照明による消費電力の削減効果などがあるとした。

また、2009年度以降は海外向けのスーパーグリーンプロダクトおよびアドバンストグリーンプロダクトを投入する考えを示し、海外におけるエコプロダクト戦略にも力を注ぐ。

エコポジティブ・オペレーションでは、これまでのスーパーグリーンファクトリー(SGF)の取り組みを進化させた「スーパーグリーンファクトリー II」を開始。現在、国内9拠点のすべてがSGFに認定されているが、これをさらにS、A、B、Cの4ランクに分類。2012年度までに国内拠点のすべてをAランク以上、海外拠点のすべてをBランク以上とすることを目指す。海外拠点では、現在、9拠点がSGFとなっており、認定されていない11拠点のSGF化を急ぐ。

「スーパーグリーンファクトリー II」の取り組み

また、今年10月から稼働する堺工場は、「世界最先端の環境先進コンビナート」と位置づけ、「省エネ化した液晶テレビ、創エネを実現する太陽電池の生産拠点であり、環境に良い製品を、環境に良い工場で作る、というコンセプトを実現していく。屋上に設置した最大18MWの発電出力を持つ大規模ソーラー発電は、亀山工場の3倍規模となる。また堺工場にLED照明を導入する。台数は全体で約10万台、素子数では6000万にもおよぶ規模となる。これにより、消費電力は47%削減でき、CO2排出削減量は年間1万7750トンにものぼる」(森本執行役員)という。

エコポジティブ・リレーションシップでは、環境フォーラムの開催やホームページを通じた情報公開などの環境コミュニケーションの展開、小学生を対象にした環境教育の展開などがある。同環境教育は、2009年5月までに、日本国内において、1175校、8万2000人を対象に実施しており、2009年4月からは米国および中国へ展開し、それぞれ45校、30校で実施するほか、今後はアジア、中東、欧州など世界規模で展開する考えを示した。