太陽系に存在する8つの惑星の中で最も太陽に近く、それがゆえに地球からの観測が非常にむずかしい天体が水星である。現在、NASAは水星に向けて探査機「メッセンジャー(MESSENGER: MErcury Surface, Space ENvironment, GEochemistry, and Ranging)」を飛ばしており、順調にいけば2011年に水星の軌道に入る。

燃料を節約するために、メッセンジャーは万有引力を利用して速度や軌道を調整する"フライバイ"という方法を採っている。2004年に打ち上げられて以来、地球、金星、そして水星でフライバイを繰り返しているメッセンジャーだが、今回紹介する画像は2008年10月、第5回目のフライバイ時に撮影された、意外にもなだらかな表情をたたえる水星の表面だ。

月の表面によく似た水星の地表。この画像の外側には凹凸がはげしいクレーターが存在するという

水星に近づくメッセンジャーのイメージ。太陽光から機体を守るためにさまざまな耐熱技術が採用されている

水星、金星、地球、火星は、ガスやチリが主成分の木星や土星とはまったく異なる"岩の惑星"、つまり内部に金属の核をもつ硬い天体だ。太陽に近いからといって水星は決してつねに灼熱の大地というわけではない。太陽光が当たらない地方や時間帯も存在するのだ。このようになだらかな表面をもっているのは、溶岩が"冷えて"固まった証だと考えられている。

水星に関してはわからないことが多く、地図も全体の40%ほどしか作成されていない。この画像もまだマッピングされていない地方のものだ。メッセンジャーは今年9月に最後の水星へのフライバイを行い、その後、周回軌道に乗る予定だ。