半導体ベンダの米Integrated Device Technology(IDT)の日本法人である日本アイ・ディー・ティーは6月3日、同社のDisplayPort(DP)準拠IC「PanelPort」に、マルチモニタ/ディスプレイを実現する「VMM1300」を追加したことに関する説明会を開催した。

DisplayPortはDVIの後継を狙った規格であり、Video Electronics Standards Association(VESA)により策定され、ハイエンドモニタや、最近のMacBookやMacBook Proなどでの採用が進んでいる。独自のマイクロパケット・アーキテクチャにより、同一の配線/ケーブルで2次オーディオパケットを転送可能なほか、単一コネクタで複数のモニタをサポートすることが可能なのが特長となっている。

米IDTのVice President and General Manager,Video and Display OperationのJi Park氏

米IDTのVice President and General Manager,Video and Display OperationのJi Park氏は、「Fraunhofer IAO laboratoryの調査によると、ディスプレイのサイズが大きくなると、生産性が高まるが、それ以上に複数の小型ディスプレイを使えたほうが生産性向上率が高い。ディスプレイ3台を使える業務環境は生産性が35.5%向上するという結果もでている」と指摘。また、コスト面でも、「米国では30型のモニタが1500ドル程度するが、19型のモニタは3台揃えても350ドル程度で済み、投資コストを抑えることができる」という。

加えて、従来のマルチモニタ環境では、PCにグラフィックスカードを追加する必要があり、追加コストが発生するほか、グラフィックスカードを増やすことによる消費電力の増加も問題になると指摘。USBによるサブモニタについても、「(USB3.0だとしても)帯域幅の問題により、データを圧縮して転送する必要があるため、画質が劣化するほか、他にUSB機器が接続されていた場合、CPUリソースの消費が大きくなる問題やコンテンツ保護(HDCP)のサポートがないなどの問題がある」とする。

VMM1300は、ハードウェアであるため、GPUやディスプレイドライバの変更は不要であり、DisplayPort v1.1aのほか、VESA Direct Drive Monitor、HDCP v1.3、EDID v1.4にそれぞれ準拠、対応しているほか、WHQL(Windows Hardware Quality Labs)が不要という特長を持つ。

VMM1300は、ハブ方式、カスケード方式の両方に対応しており、ハブ方式はドングルでの提供、カスケード方式ではマザーモードやグラフィックスカードへの搭載やノートPCのドッキングステーションへの搭載が予想されている。

ハブ方式での接続のほか、デイジーチェーンによる接続も可能

デモで紹介されたドングルの試作品は、出力ポートが3つあり、入力ポートが1つで、PCとVMM1300が接続時に同期を図ることで、3つのディスプレイを管理するというもの。3台としてあるのは、「DP v1.1aのデータレートが仕様で最大10.8Gbpsとなっているため」(同)であり、「データレートが2倍になる予定の同v2.0ではより多くのディスプレイに接続できるようになる予定」(同)とする。

同社により試作されたデモ用ドングル(PCからDisplayPortケーブル経由で供給されるバスパワー1.5Wで稼働している)

ドングルを用いてDELLの24型モニタ3台をつなげたところ(右は一番左のモニタに動画を、一番右のモニタにExcelの表を表示したところ)

また、2009年に仕様が決定する予定のv1.2で盛り込まれることが検討されているデイジーチェーンに先行対応しており、その場合は、「1台1台と10.8Gbpsでデータのやり取りを行うため、3台という制限はなくなる」(同)とのことである。

マルチディスプレイは、例えば3台接続していた場合から2台にいきなり切り替わっても、自動的に2台で最適表示できるように再設定ができるほか、コピーモードとして、同じ画面を3台に表示することも可能であり、さまざまな使い方が可能だという。

MacBookから出力して3画面表示したところ

一番右のディスプレイケーブルを抜き2台のディスプレイだけ生きている状態にしたもの(自動的に3第で表示していた画面を2台で表示するように切り替わる)

3つのモニタともに同じ画面を表示することも可能

Park氏は、「MacBookを例に挙げるまでもないが、ノートPCがデスクトップPCの出荷数を上回った現在、ノートPCでもマルチディスプレイを実現する必要が出てきた。しかし、今のノートPCでは真の意味でのマルチディスプレイができていない。IDTがマルチモニタソリューションを提供することで、そうした市場ニーズをサポートしていく」とし、すでに次世代品の開発を進めており、音声信号への対応なども取り入れていくとしている。

なお、VMM1300はすでにサンプル出荷を開始中。量産は2009年8月より開始予定。ファウンドリを使用しており、プロセスは非公開としている。なお、VMM1300を搭載したドングルやグラフィックスカードなどの各種製品については、2009年第4四半期には最初の製品が出てくる可能性があるとした。

マルチモニタ/ディスプレイの活用イメージ(主なターゲット市場としては、コンシューマやビジネスのほか、金融、行政、ゲーム、グラフィックス、デジタルサイネージなどの分野を考えているという)