特定非営利活動法人日本NPOセンターは、NPO法人、公益法人、社会福祉法人といった民間非営利組織に対する新たなIT支援策として、アドビ システムズ、シマンテック、マイクロソフトの協力のもと、ソフトウェアを寄贈する「TechSoup Japan(テックスープジャパン)」事業を6月から開始する。同事業は、米サンフランシスコに本部を持つ民間非営利組織のTechSoup Globalが、世界23か国で実施しているもので、日本では日本NPOセンターが事業運営を行う。

TechSoupプログラムに参加する関係者

マイクロソフトでは、Windows Vista、Office Professional 2007、SharePoint Server 2007など40種類のソフトウェア、アドビシステムズではAdobe CreativeSuite4 Design PremiumやAdobe InDesign、Adobe Photoshopなど7製品、シマンテックでは、Symantec Endpoint Protection 11.0、Symantec AntiVirus Corporate Edition 10.2など4製品を提供する。

TechSoup Globalの最高執行責任者 ジェリ・ジン・ドウラン氏

TechSoup Globalのジェリ・ジン・ドウラン最高執行責任者は、「TechSoup Globalは、1987年の創設以来、『社会のために活動する世界のあらゆる組織が、最大の力を発揮するために必要なITの知識やリソースを手にしている時代を目指す』ための活動をしている。具体的には、非営利団体および社会利益貢献団体に対して、IT製品、コンテンツ、コミュニティを提供する活動と、キャパシティビルディングを支援する間接的活動がある。今回、新たにプログラムを開始する日本は、コンテンツとコミュニティを両方備えてスタートするという点では、初めての国になる。また、新規の国のなかでは最大のドナープログラムになる。TechSoup Globalにとって、画期的なステップになると期待している」とした。

TechSoupプログラムへの協力企業は全世界で35社に達し、これまでに9万1,000団体に対して、470万のIT製品を配布。その規模は小売価格に換算すると18億ドル(約1,800億円)に達するという。

NPO団体などは、日本NPOセンターのTechSoup Japanサイトを通じて団体登録を行い、TechSoupアカウントを取得する。ログインして製品を選択し、寄贈を申請。入力されたデータに基づいて予算規模や活動内容を審査。提供するソフトメーカー各社の社会貢献プログラムにあわせて提供するソフトを決定する。申請が受理されたのちに、手数料を支払う仕組みとなっている。手数料は小売り価格の4 - 8%となっている。

また、TechSoup Japanサイトでは、ラーニングセンター、コミュニティのコーナーも用意。ラーニングセンターでは、TechSoup Globalが発信する記事の和訳を中心にNPO向けのIT活用ノウハウを配信。今後、日本語のコンテンツも追加する。コミュニティではITに関するホットトピックスやIT関連企業の社会貢献活動について配信。IT活用に関する質問コーナーも用意する考えだという。

TechSoup Globalの活動範囲

TechSoup Japanサイトを通じての申請の流れ

ラーニングセンター

コミュニティ

アドビのクレイグ・ティーゲル社長は、「アドビは、社会に利益を還元するという考え方を持っており、マッチングギフトプログラム、ダラーズトゥードゥーアーズ、アドビアクション委員会などに取り組んできた。こうした活動を通じて、昨年度実績で1万5,000を超えるNPO法人、学校などにソフトの寄贈、資金的支援を行ってきた。とくに、TechSoupを通じて、世界のNPO法人に対してアドビの最新ソフトを提供してきた実績があり、今回の日本でのプログラム開始に伴い、参加できることは意義がある。学生、子供、慈善団体、NPOなどへの支援を継続的に行っていきたい」とした。

シマンテックの足立修執行役員 社長室担当は、「TechSoupの活動は、米国、カナダ、アイルランド、英国、ドイツ、スペイン、ベルギーなどでも参加しており、アジアパシフィック地域では、オーストラリアに次いで2国目となる。2008年度においては、全世界1万団体にソフトを提供している実績があり、日本でのTechSoupの開始にあわせて、全面的な協力したい。年間15万ドル(約1,500万円)のソフトウェアを寄贈しているが、単にソフト寄付をするだけでなく、社員全員が同じ価値観を持って、地域に貢献できるような風土づくりにつなげていく」とした。

マイクロソフトの伊藤ゆみ子執行役 法務・政策企画統括本部長は、「マイクロソフトでは、NPO + ソフトという形で準備を進めてきており、日本でのTechSoupの開始を待ちわびていた。2008年で実績では、全世界19カ国において3万本のソフトウェアをTechSoupを通じて提供した。まだNPOのIT活用は十分ではないと考えている。日本の多くのNPOがこのプロクラムを活用することで、生産性、効率性を高めていただき、社会への貢献度を高めていただきたい」とした。

アドビシステムズのクレイグ・ティーゲル社長

シマンテックの足立修執行役員 社長室担当

マイクロソフトの伊藤ゆみ子執行役 法務・政策企画統括本部長

一方、TechSoup Japanを運営する日本NPOセンターの早瀬昇副代表理事は、「日本には、3万7,000のNPO法人があるが、そのうち、24.3%が年間予算100万円未満。51.2%が500万円未満となっており、財政的な地盤が厳しい環境にある。それを支援するものとして期待している。また、今回の申請では情報公開が前提となっており、情報公開が実利に結びつくものとしては初めてのもの。半分のNPOがホームページを開設しているが、日本のNPOの透明性にもつながる」とした。

また、TechSoup担当の吉田建治氏は、「表現力を実現できるアドビ システムズ、オフィスの効率化を図ることができるマイクロソフト、NPOが弱いとされるセキュリティ面での強化が図れるシマンテックの3社に協力してもらったのは心強い」とした。

日本NPOセンターの早瀬昇副代表理事

日本NPOセンターのTechSoup担当の吉田建治氏