フリーのオンライン百科事典「Wikipedia」が、宗教団体のChurch of Scientology (サイエントロジー)のIPアドレスからの編集を禁止した。米国の複数のメディアが伝えている。これはArbitration Committeeと呼ばれるWikipediaの管理メンバーらの投票によって先週になり決定されたもので、サイエントロジーのIPアドレスからの恣意的な編集が行われていたことを受けた措置となる。

Wikipediaではアクセス禁止までの経緯も掲載している

同件を報じたメディアの1つの米eWeekによれば、サイエントロジーによる恣意的な編集はこれまでにもたびたび問題になっており、WikipediaのArbitration Committeeでは、いわゆる「編集合戦」「個人攻撃」「一方的な主張」などWikipediaのガイドラインに抵触するような行為の数々を調査、結果としてサイエントロジーのIPアドレスから同件に関する記事の編集が行われ続けていたことを確認した。さらに"プロのサイエントロジー信者"とも呼べる書き込み人が複数のIPアドレスを使い分けることで、編集内容を意図的に操作し、編集した個人の特定が難しくなるように仕向けていた節もあったという。個人攻撃があったこと、そして記事の中立性に疑問符がついた点で問題があったと同委員会は一連の件でコメントを締めている。サイエントロジーのアクセス禁止までの経過は、WikipediaのRequests for Arbitrationのページで確認できる。

これまでも特定の組織内部から継続的な編集が行われたり、ライバル企業を中傷する書き込みが行われて議論を呼んだケースはたびたびあったが、実際にアクセス禁止の措置まで踏み込んだのはサイエントロジーが初だという。逆に、今回のケースがそれだけ悪質だったということを意味する。一方でサイエントロジー以外のIPアドレスは依然として開放されており、例えばサイエントロジーの関係者や信者が個人のIPアドレスを使って編集を行うことは可能だ。参加者らによる意見交換が中立性を生み出すという、ユーザーの意識に大きく依存するWikipediaの運営方針だが、必ずしもそうした民主主義が成り立つわけではないという点で難しさを浮き彫りにした形だ。