ビジネス英語に限らず、現在の自分の実力を把握しておくことは英語力上達に欠かせない。また、英語学習はとかく挫折しやすく、モチベーションの維持がむずかしい。このための対策として、たいていの英会話学校には生徒の学習進捗度をチェックするカウンセラーを置いている。GABAも同様で、同社の社員がマンツーマンで担当している。「気をつけているのは、生徒さんが通いたい日・時間に予約を取れるようにすること。希望の予約が取れないと通う気がなくなり、そのままフェードアウトする可能性が高くなってしまう」(上山氏) - 独学では学習のペースが掴みにくくなることもしばしばあるが、「つづけて通えば必ず効果が上がる、と生徒を励ましながら一緒に走っていく存在」(上山氏) - それがカウンセラーの役割だ。

「GABAの社員には外国人が多い。これから私の英語もブラッシュアップしないと(笑)」

もうひとつ、英会話学校の評価を左右する最も重要なポイントが講師(インストラクター)の質だ。「講師は60カ国、1,000人が登録している。採用の基準はネイティブスピーカーでナチュラルイングリッシュを話すという点。したがってアメリカ人やイギリス人にこだわらず、海外経験の長い日本人の講師もいる」(上山氏)、また、ビジネス英語においては多様な英語、たとえば「インド人や中国人が話す英語」に慣れることを求められる人も多い。さまざまな英語に触れるためにも、講師は固定制にはしていないという。また、気になる講師のレベルだが、「講師のレベルは5段階評価で厳しくチェックしている。ネガティブな評価(1または2)の講師は全体の0.1%以下。講師の歩留まりは非常に良いほうだと思う」(上山氏)

27歳のときにミシガン大学ビジネススクールに留学した経験をもつ上山氏だが、"日常的に英語を使う"という環境にはじめて放り込まれ、強い衝撃を受けた。「もともと英語はそれほど得意ではなかったが、あまりに理解できない状況にショックを受けた」(上山氏)という。だが会社の費用で留学させてもらっている以上、ショックを受けてばかりもいられない。いつの間にか開き直って「下手な英語」でも話さないよりはマシだということに気がついた。「ネイティブじゃないんだから下手で当たり前、と思ったら気が楽になり、それからは恥ずかしがらずにしゃべるようになった」(上山氏) - そう、多少間違っていても、口に出さなければ伝わりようがないのだ。「GABAに入社した直後、15年ぶりくらいに英語の会議に参加したが、間違った英語を使ってしまった。一瞬"マズイ"と思ったが、そのまましゃべり通した(笑)。こちらが話せば、相手も理解しようとしてくれる。ビジネスの場でも、間違いにとらわれすぎず、積極的に話すことを心がけてほしい」(上山氏)と最後にメッセージを贈ってくれた。

プロフィール

GABA 代表取締役社長 上山健二

1965年兵庫県生まれの43歳。1988年東京大学経済学部を卒業後、住友銀行(現 三井住友銀行)入社。1992年にミシガン大学ビジネススクールに入学、2年後の1994年にMBA(経営学修士)取得。1999年同行を退社。その後、中古車販売を行うジャック(現 カーチスホールディングス)の代表取締役社長などを経て、2002年に更生会社となった長崎屋に社長室長兼経営企画室長として入社、翌年3月からは事業管財人代理兼代表取締役社長として同社の更生手続を指揮する。2006年7月、更生手続を終結させ更生会社の冠を外す。これは16年間の更生計画を12年前倒しし、4年間で終結した事例として業界の内外から注目を浴びた。2008年4月に同社を退社、10月に専務執行役員としてGABAに入社する。2009年3月より現職。

「仕事は自分ひとりではできない。いかに周囲の助けと信頼を得て結果を出していくかが重要。どの会社に行っても自分より業務に詳しい人はたくさんいるのだから、新しい会社に入るときは進んで教えを乞うようにしている」(上山氏)