数回に分けてお送りしている「QuarkXPress 8」徹底攻略。『QuarkXPress 8公認ガイドブック』(弊社刊)の筆者のひとり冨山詩曜が、旧バージョンのユーザー向けに、QuarkXPress 8の便利なチップスを紹介する。今回は、クォークの軌跡を辿りつつ、新たなQuarkXPress 8の姿を浮き彫りにする。

QuarkXPressの光と陰、そして希望

バージョン3時代、QuarkXPressは世界中でレイアウトソフトのスタンダードとなっていった。特に日本では、PageMakerの日本語化がうまくいっていなかったこともあり、ユーザにとっての選択肢はQuarkXPressでしかあり得なかった。その、売上げの良かった日本に対して、クォーク社がバージョン4を鳴り物入りでリリースしたのは1998年。ところがアップグレード代があまりに高額なため、このバージョンに移行しようとする人々は少なかった。実際今でも、バージョン3.3を使い続けている人がいるくらいだ。

キャプション:3.xJから4へのアップグレード代は9万9,000円だった。現在は3万2,550円で、3.xJから8へアップグレードできる

バージョン4の失敗からか、クォーク社は日本に対する興味を急速に失ったように見える。DTPのOS X化が進む中で、クォーク社は時期外れのOS 9版バージョン5をリリース(海外のみ)。その次のバージョン6は日本でもリリースされたが、高価格な、Mac OS Xで動くバージョン4.1という感じで、新機能を待ち望んでいたユーザーがInDesignへ移行するきっかけを作ってしまった。その反省から出たバージョン7(海外のみ)は、新機能も多く盛り込まれていたが、バグも多かった。

バージョン6は新機能があまりない分、過去バージョンとの互換性はいいと言える

しかし、バージョン8で全ての体制立て直しが始まった。CEOが代わり、日本の社長も代わって、一度は去っていった優秀な社員たちが呼び戻される中、アジア市場の担当である重役から「日本市場を重要視しろ」と指令が下ったのだ。そしてバージョン8は、今までのバージョンではあり得ないほど、日本向けの機能が強化された。

バージョン8は原稿用紙のような升目グリッドも使えるようになった。その他にも文字組、和文OpenType対応など、日本市場を重視した機能強化が多い

しかも、今までのバージョンでは日本語向け開発コストが上乗せされて、海外版より異常に価格が高かったのが、8では他の国とそれほど変わらない価格設定となった。さらにクォーク社の姿勢も、ユーザの声を大切にするものへと変わって来た。

以前は、日本語版と海外版は全く別物だったが、現在、QuarkXPressのフォーマットはどの言語でも同じとなっている

アドビ社の独占市場となりかかっているDTP業界において、より使いやすいレイアウトソフトを手に入れようとするなら、QuarkXPress 8ユーザとなって、クォーク社に機能リクエストをたくさん伝えるのも、ひとつの有力な手ではないだろうか。

QuarkXPress 8公認ガイドブック

今回は、QuarkXPressとクォーク社の変遷を時間とともに辿ってみた。QuarkXPress 8がいかに日本のユーザーにとって有効なバージョンアップであるかがわかって頂けただろう。QuarkXPress 8は、実際の操作はもちろんのこと、ワークフローも見据えた、全体的な効率アップを前提にしている。自社にスムーズに導入活用するにはどのように使っていけばいいのかお悩みの方は、3月14日に発売された「QuarkXPress 8公認ガイドブック」をぜひ手に取ってほしい。QuarkXPress 8をフルに活用するために必携の本書は、新機能の紹介はもちろんのこと、3.3、4.1ユーザのための移行テクニックや、ワークフロー解説なども盛り込まれた幅広いコンテンツで、ユーザをトータルにサポートする作りとなっている。「そんなの知ってることばかり」という方もご安心を。QuarkXPressのカラー管理やXMLがベースとなる新機能ジョブジャケットや、Flashデータを書き出すインタラクティブレイアウトなどについて、きちんと触れているのは本書だけ。まさに、QuarkXPress 8の特徴を網羅した解説書となっている