日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は4月8日、2008年10月から2009年3月にかけて実施した「企業IT 動向調査2009」の結果を発表した。同調査は、企業のIT部門、社内IT利用部門を対象に、アンケート調査とインタビュー調査を行い、企業におけるIT投資、IT利用、IT 推進体制などに関する現状と経年変化を明らかにするもの。

アンケート調査の回答者の内訳は、IT部門が864社、経営企画部門が746社。今回は昨今の景気動向を踏まえ、2009年3月に、IT部門長に電子メールで「2009年度のIT予算」に関する追加アンケートが行い、270社より回答を得ている。インタビュー調査は48社のIT部門長と7社の情報子会社役員を対象に行った。

2009年3月に実施したIT予算の動向に関する追加調査では、以下のような結果が出ている。

  • 2009年度のIT予算は、増加を予測する企業が20%、減少を予測する企業が55%で、増加と減少の割合を指数化したDI 値は▲35 となった。本調査時(08 年11月)の09 年度予測は0であり、35ポイント減となっている。
  • 1社当たりの平均IT予算額の試算は約10%減少する見込み。本調査と追加調査に参加した企業においては、「10%以上減少」が29ポイント増加して47%、「30%以上減少」が16 ポイント増加して22%となっている。
  • 2009年度のIT予算は大企業の落ち込みが急であり、売上高が大きくなるほど影響が深刻。

本調査で聞いた「2009年度の新規投資」については、予算ベースでマイナスという結果が出ている。グローバルにビジネス展開している超大企業ほど、早くブレーキを踏んでおり、新規投資を大幅にカットしたようだ。

IT部門がIT投資で解決したい中期的な経営課題は「業務プロセスの改革」と「経営トップによる迅速な業績把握・情報把握」、経営企画部門がIT投資で実現したい中期的な経営課題は「経営トップによる迅速な業績把握・情報把握」がトップという結果に。

テクノロジー・IT サービスへの関心・導入状況については、「サーバ仮想化」「SaaS/ASP」「NGN」「BI」に対する関心の高さが明らかになった。特に、ITリソースの再配分によるIT資産の効率化がダイレクトにコストに反映される「サーバの仮想化」に対する関心度は80%を超えている。SaaS/ASPは中堅中小企業の情報系業務システムで利用が進んでおり、基幹系業務システムではまだまだ試行的導入段階にあるが、経済産業省が3月末に提供を開始したJ-SaaSで普及に弾みがつくのではという見解が示されている。

IT推進組織に関する調査結果としては、IT部門の役割が「全社システムの企画」「IT 予算の管理」「IT 戦略の策定」に特化しつつあることがわかった。「システム開発・運用」「ネットワーク管理」はアウトソーサーが担う割合が大幅に増加している。

また、現在のIT組織体制では「開発ノウハウの空洞化」や「縦割り組織の弊害」で開発が遅れる現実が浮き彫りになっており、その改善には、IT 組織体制の改善のための施策は「経営との連携強化」と「IT部門の要員の増強と人材の育成」が必要と指摘されている。