日本オラクルは、CRMアプリケーション最新版「Siebel CRM 8.1.1」を2月5日から提供開始する。最新版では、とくにロイヤリティ管理、セルフサービス機能の強化に重点を置いている。経済環境が厳しくなる状況のなか、IT投資の対象として、優良顧客の維持、確保、獲得のための有力な手段としてのCRMには優位性があることを訴求、拡販を図っていく意向だ。価格は1ユーザーあたり13万1,250円から。

日本オラクル アプリケーションビジネス推進本部長 塚越秀吉氏

近年、顧客が製品やサービスの購入先を選ぶ際、それらのブランド力、品質のよさ、あるいはポイント還元などのメリットを基準にし、これらブランド力などの要因がより強力な店やベンダに顧客が集中していることから、企業では、このような、顧客が特定の店や企業に対して抱く信頼感、いわゆる「顧客ロイヤリティ」が重要になってきている。企業がいかにして「顧客ロイヤリティ」を獲得できるかどうかにより収益力が左右される。

同社 アプリケーションビジネス推進本部長 塚越秀吉氏は「2008年の秋に出たあるリポートによれば、税引前利益に対する、IT投資の効果は、ITコスト削減に比べ、販売・価格戦略の方が高くなっている。CRMはこの領域を支えている」と話す。

「Siebel CRM 8.1.1」では、ロイヤリティ管理機能として、ポイントサービスなど顧客ロイヤリティプログラムの管理機能を強化した。会員登録管理、ポイントサービスの累計や交換の管理、メンバー向けサービス案内などのプロモーション管理についての機能が新たに追加された。また、管理作業を容易化する「ロイヤリティサービスエージェントコンソール」、POSなど、企業ごとのシステムとの連携を円滑化する「ロイヤリティインストアエンジン」も新たに加わった。さらに、会員顧客のポイントやサービスの利用状況から顧客の趣味嗜好を分析することで、企業は、最適なサービスの提供に活用できる。さらに、単に製品を売るだけではなく、その後のサービスでも収益を上げることにもつなげられるという。

Siebelのロイヤリティソリューション。赤字部分が今回の強化ポイント

Siebel 8.1.1はもちろん日本語インタフェースが用意されている

セルフサービス機能は、インターネットのブロードバンド化の進展で、電子商取引が普及して結果、これらを担うWebサイトで、各顧客自身が、サイト上で自分の情報を登録、変更、削除などの作業を行うことが増えたことにともなって強化された。具体的には、それらの情報と「Siebel CRM」の顧客情報との連携と同期が可能になっている。

これまでは、Webアプリケーションと、「Siebel CRM」のマーケティングアプリケーションや顧客データとを連携させるためには、手作りでの構築が必須だったが、今回の機能強化により、連携部分が標準搭載された。Javaの標準技術や、同社の基盤技術のひとつである「Oracle Fusion Middleware」の活用により、システム構築の障壁も低くなっているという。

日本オラクル セールスコンサルティング統括本部 CRM SC本部長 松瀬圭介氏

また、20種類以上の各業界向けソリューションも拡充され、通信/公益向けには請求管理システムとの連携が強化されている。公共/官公庁向けには、公的機関で取り扱われる、あるいは起こる事象についての業務や情報を管理する機能が搭載された。金融業界向けには富裕層向け金融サービスであるウェルスマネジメントの機能が強化されているなど、従来の得意分野も拡充されている。

今回、同社がロイヤリティ関連の機能を大きく改善することに注力したのは「リピーターが収益をもたらす」(同社 セールスコンサルティング統括本部 CRM SC本部長 松瀬圭介氏)からだ。調査会社の報告によれば、英国の百貨店大手ハロッズでは、6%の顧客からの売上げが全体の55%を占め、米国の家電量販大手のベストバイでは、20%の顧客が同社利益の100%をもたらしているという。競合に打ち勝っていくには「すべての利益を生み出す20%の顧客とはどのような層なのか。顧客のニーズ、購買傾向を分析し、顧客満足度を的確に捉え、リピーターとし、保持していく」(松瀬氏)ことが重要になる。