大塚商会とインスパイアは、ソニーが開発した指静脈認証技術「mofiria」(モフィリア)をベースとしたB2B領域で協業すると発表した。今後両社は市場開拓とサービス開発を共同で行っていく。

ソニーが開発した「mofiria」は、生体認証の1つで、指の静脈パターンにより本人確認を行う「指静脈認証技術」。LEDから発光された近赤外光を指静脈にあて、体内で散乱した光をCMOSセンサーで撮像する独自の反射散乱方式を採用。静脈の還元ヘモクロビンが黒く写ることを利用してパターン化している。

反射散乱方式のイメージ図(出典:ソニー)

認証する際、指を当てる角度や方向が異なることを考慮して、あらかじめ複数のテンプレートを登録。そのときに最も近いテンプレートを使って認証を行うという。

生体認証では指紋認証が先行しているが、指紋認証では、4%程度の人が指の摩耗により利用できない、認証に時間がかかる、韓国でなりすましの事例が発生するなどセキュリティ面での不安など、問題があるという。

携帯電話を使っての認証。すでに携帯に組み込み可能な程度に小型化されているという

読み取った静脈パターン

大塚商会とインスパイアでは、「mofiria」の認証の高速性、携帯にも実装できる小型・携帯性、精度の高さ、快適な操作性などに注目、今回の協業につながったという。認証時間は、CPU能力の低いデバイスでも0.25秒程度で行えるという。

現在のところ利用例として、Windowsログイン認証、指ごとに別アプリを割り当て起動させるアプリケーションランチャ、WebでのID、パスワードの代替利用、Windowsのユーザー切り替え、入退出時の認証などが考えられている。

USBで接続するPC用の認証装置

Windowsログイン認証での利用

インスパイア 代表取締役社長 高槻亮輔氏

ソニーではこの技術をB2Bだけでなく、コンシューマ市場を含めて、広く一般に普及させていきたい考えで、事業開発の部分をインスパアに託している。当面は、今回の協業をベースに国内のB2B市場で事業展開を図っていく予定だ。インスパイア 代表取締役社長 高槻亮輔氏は「本人認証をユビキタス化でき、いろいろなデバイスに載せることができる」と述べ、新たな市場構築に期待を寄せる。

今回の大塚商会とインスパイアの協業では、インスパイアがビジネスモデルの構築、アライアンスマネジメント、コンサルティングを担当、一方大塚商会では、「mofiria」技術を組み込んだ製品の販売、「mofiria」技術および製品を企業内統合認証の基盤と利用するためのSIビジネス、「mofiria」技術を組み込んだASPサービス等の提供、OEMビジネスを行っていく。

具体的には、以下の4つのサービスを提供する。

企業内ネットワーク向けサービス
・Active Directoryの連携による、企業内統合認証環境の実現
・綜合警備保障と連携した入退出管理
・ログ管理サービス
・IT資産管理サービス
・業務支援サービス など

端末向けサービス
・モバイルを含めたクライアントPCに対して、「アンチウイルスサービス」や、モバイルPCの盗難・紛失時の情報漏えいを防ぐ「遠隔データ消去サービス」を提供。アンチウイルスサービスでは、トレンドマイクロ、遠隔データ消去サービスではワンビ、OSKと協業予定。
・PC内データの自動バックアップ(リモートバックアップ)
・リモートメンテナンス
・割符保管サービス など

管理業務向けサービス
・ソフトウェアのライセンス管理、セキュリティパッチの適用やポリシー運用の状況などのIT資産管理サービス
・モバイルシンクライアント時代に対応した各種のマネジメントサービス など

企業間ネットワーク向けサービス
・サイバートラストと連動した個人証明サービス
・各種ASP型アプリケーションサービスへの認証統合サービス基盤の提供 など

協業による事業展開を発表する大塚商会 取締役兼専務執行役員 片倉一幸氏

「mofiria」技術について、大塚商会、インスパイアともソニーと独占的な契約は結んでおらず、今後他社の参入も予想される。ただ、インスパイアでは、今回の技術についてソニーと共同で特許を出すなど、「mofiria」の技術面での強みがあり、高槻氏は「今後、他社がこの技術を使ったビジネスに参入することもあるだろうが、技術的にすぐに追いつくのは難しいだろう」と自信を見せる。インスパイアでは今後、「mofiria」を利用した新たな事業を開発し、他社との協業も模索していくという。

ただ、現在、認証装置は試作の段階で、今後はソニーの製品化を待って、具体的な事業展開を検討することになる。