Mozilla、Microsoft、Googleの代表が「Webブラウザの未来を語る」というパネルセッションがAdd-on-Conのクロージングキーノートとして行われた。モデレータはYahoo!のシニアJavaScriptアーキテクトであるDouglas Crockford氏が務めた。

Mozillaのエンジニアリング担当バイスプレジデント、Mike Shaver氏

Internet Explorer担当シニアテクニカルエバンジェリスト、Joshua Allen氏

Chrome担当プロダクトマネージャー、Brad Rakowski氏

アドオンの有効性とセキュリティへの懸念

討論のスタートとなった質問は「Webブラウザの機能に対するユーザーの不満を解消する手法として、アドオンは最適なモデルか?」だった。MozillaのMike Shaver氏は、Webを利用する上で複数の専門アプリケーションを使う必要がなくなる点でアドオンは有効であると指摘。複数のソフトウエアを快適な利用体験でまとめ上げるのも、今日のWebブラウザの重要な役割であるとした。これはGoogleがChromeを投入した理由に近い。そのGoogleのBrad Rakowski氏もShaver氏のコメントに同意した上で、改めてChromeの狙いについて「われわれはWebに依存しており、"Webをより快適にする"のがわれわれの目的だ。たとえ(Chromeが)市場シェアを獲得できなかったとしても、(Webブラウザの)JavaScriptの処理速度が20倍になれば、Googleとしては満足である」と競争効果を強調した。

アドオンに関してはセキュリティに対する懸念が根強い。この点についてMicrosoftのJoshua Allen氏は、ネットにおける攻撃と防御の繰り返しを「まるで軍拡競争のようである」と表現しながらも、Windows Vista以来のセキュリティを最優先したMicrosoftの開発姿勢を例に勝ち残る自信を見せた。それはInternet Explorer 8におけるWeb slicesやAcceleratorsの開発にも反映されている。加えて標準サポートの必要性を強く訴えた。標準ベースに従った競争の上でWeb向けのツールが向上すれば、セキュリティに及ぶ相互運用性が改善される。Shaver氏(Mozilla)も確立された分野での標準の重要性には同意した。ただし標準サポートを看板にするあまり、まだ確立に至っていない開発中の分野の成文化を急ぐ動きが見られる点に警鐘を鳴らした。Googleはさらに慎重で、アドオンが利用できるリソースを制限する必要性を強く主張した。Chromeのアドオン・プラットフォームは制限的なものになりそうだ。

「オープンネスこそがWebブラウザの未来」

このパネルセッションで印象的だったのは、シェアで大きく勝るMicrosoftの控えめな発言だ。「現状では、拒否権を行使できるほど誰も市場をコントロールしていない」と自分たちが優位な立場にあると考えていない様子である。影響力という点では、むしろFirefoxの方が先行しているように感じた。ただAllen氏の言葉に反省や後悔はなく、Internet Explorer 8に向けて健全な競争が見られる現状をMicrosoftも満足している様子も伝わってきた。その理由はオープンネスである。

Webブラウザには現在、FlashやSilverlightなどのライバルが登場している。これらの"リッチだがクローズド"なプラットフォームに対して、Webブラウザメーカー3者の意見は「オープンネスこそがWebブラウザの未来」という点で一致していた。「豊富な機能を備えていないWebブラウザでクールなことを実現するのは困難だが、オープンネスを通じて開発者たちはWebの可能性を広げている」とRakowski氏。Shaver氏は「ユーザーはFirefoxをChrome、またはInternet ExplorerやSafariに変えても、同じように自分たちのWebアプリを利用できる。しかしFlashからSilverlightにスイッチはできない」と指摘した。

以前はブラウザ技術が向上しても、その違いはほとんどユーザーに意識されなかった。それが今日では、ビデオ再生だったり、ソフトウエアのWebアプリ化など形となって伝わっている。Shaver氏いわく「(Webの)イノベーションは、オープンネスの実現によって加速している」。アドオンは今後、そのサポーターという重要な役割を担うことになる。