マザー工場となる新潟工場

一方、新潟工場の概要についても説明した。

新潟工場は、上越新幹線燕三条駅から車で約20分。同社のマザー工場と位置づけられる拠点。4万2,837平方メートルの敷地面積に、正社員505人、派遣社員243人が勤務。

ATMをはじめとする金融システム製品、POSターミナルをはじめとする流通システム製品、フライトインフォメーションをはじめとする表示システム製品のほか、手のひら静脈認証、RFIDやカラー電子ペーパー、サービスロボット「enon」といった新規ビジネス製品の製造も行っている。

紙幣リサイクルユニット(BRU)。紙幣の入出金を行う装置

ATMに内蔵されている紙幣投入ユニット

入金確定前に一時的に紙幣をプールする一時入金部ユニット

ノウハウの固まりとなる紙幣鑑別ユニット。紙幣の真偽を鑑別する

ATMに利用される紙幣出金ユニット

ATMに内蔵し、金庫ユニットから出金用紙幣を蓄える金庫部ユニット

ATMに紙幣を補充するために利用する金庫ユニット

ATMに内蔵する通帳プリンタユニット

カード処理ユニット。医療機関などでカードを入れて処理する場合などに利用

これらのユニットがATMに内蔵された状態

手のひら静脈認証機能を搭載したATM

こちらは、金融機関で利用される独立型の通帳プリンタ

また、富士通フロンテックの前身となる金岩工作所、蒲原機械工業時代から金型プレス事業を行っており、その延長線上として、現在でも金型製作を行っているほか、高い精度が求められる切削加工製品の製造も行っている。

切削加工技術においては、黄綬褒章を受章した技術者を擁しており、他社にできないような高い精密性を実現する切削加工の受注も行っている。その技術は、自動車分野、医療分野、半導体分野などにも活用されている。

切削加工によって製造されるレントゲン装置向けのガイド。これを量産できるのは富士通フロンテックだけ

通信装置向けのハウジング。薄肉1.5mmながらも複雑な形状による、精密な切削加工で実現

自動車向けのマフラー。絞り型という複雑な形状を実現する金型を製作する

自動車向けのタービン。タービンとブレードの取り付け隙間寸法を0.05mm以下とする高精度での形状

2007年度における新潟工場の売上高は694億円。2008年度は652億円の売上高を見込んでいる。

トヨタ生産方式を導入

同工場では、2004年6月からトヨタ生産方式を導入し、改善に取り組んできた。今年9月時点で、ATMの生産現場では、100時間で20台の生産体制だったものを、2.5倍となる50台に効率化。スペースは3,134平方メートルから939平方メートルへと70%減少、手番は3.1日から1.8日に42%減少した。

また、POSの生産現場では、同様に、生産性で100時間あたり67台から93台へと1.4倍、スペースは870平方メートルから400平方メートルへと54%削減、手番は1.1日から0.7日へと36%削減した。

POSシステム。最上位のTeamPos3000は、ディスプレイ、プリンタ、キーボードが本体と分離でき、レイアウトフリーになる

セルフチェックアウトシステム。今後の需要増加が期待される

ハンディターミナル。大画面化により商品一覧の表示にも最適

プリンタを内蔵した小型のハンディターミナル

バーコードリーダーを内蔵した小型ハンディターミナル

富士通フロンテック新潟工場長・山村吉美経営執行役

新潟工場長の山村吉美経営執行役は、「今後は、部材のJIT調達の推進、平準化生産の推進が課題となる。JIT調達では、2008年度目標として210社3,500図番を掲げているが、現時点では125社1,973図番。ルート便の拡大により、納入体制を構築し、定量かんばん方式でのJIT納入品を拡大する。また、平準化では±10%を目標としていたが、現時点では±21%。新システムであるiTOSの導入により、上流時点からの平準化活動を推進する」という。

iTOSは、今年5月から稼働している同社のSCMシステムで、これまで8つのシステムに分散していたものを、シングルデータベース化、リアルタイムオペレーション化を図ったもので、部品手配に最大13日かかっていたものを1日に、納期回答も14日間から1日にと大幅な短縮を実現。部品サプライヤともリアルタイムで情報を共有できるようになった。

また、工場内には自社製品でもあるRFIDを活用した部品供給システムを構築。従来のバーコード読みとりから、RFIDに転換したことで、一括自動読みとり、モノと情報の一元化、動線の短縮化などを図ることができたという。

「従来比2倍の業務効率化、管理業務の高速化と在庫の6割削減、紙かんばん、伝票類の廃止による環境配慮の実現が可能になった」という。

また、新リペアサービスオペレーションシステム「IRIOS」の導入により、顧客や、19社の修理ベンダーとのシームレスな情報連携によって、ランニングコストを50%削減するとともに、修理手番を50%削減することに成功。「こうした取り組みによって、工場のレベルアップを図る」としている。

以下、工場の様子を写真で紹介する。

ATMの生産ライン。6種類の製品をそれぞれの金融機関の要望にあわせた仕様で混流生産できる

各ユニットごとに生産されている

厳しい検査を経たのちに出荷される

自社製品であるRFIDを活用した部品供給システム

金型製作の生産現場

切削加工を行う装置

黄綬褒章を受章した五十嵐清英マイスター(手前)。後進の指導にも力が入る