ひとつのことに対するスペシャリストである必要はない
Flashアニメ業界ではトップクラスの監督である両者だが、シナリオを書くことや、絵のうまさなど、制作に関わる個別の才能に関して、意外にも自分自身を「二流である」と評価していた。また青池監督は、作品制作の際にFlashの機能を15%ほどしか使っていないということも明かした。両者が、自分自身のひとつひとつの才能を「二流」だと感じながらも、今の体制で制作しているのには理由があるという。
FROGMAN「結局そういうもの(シナリオ執筆や、作画)の組み合わせが大事であったりするんですよね。特にデジタルの世界ではひとつのことを突き詰めちゃうのも、逆に僕は危険だと思っているんです。今はFlashが一番表現しやすいツールだから使っているだけで、10年後 Flashを使っているかはわからない。だから、ひとつのことに特化するよりも、いろんなことができた方がいい」
この考え方は、すべての人が何かのスペシャリストであるテレビ業界とは大きく異なる考え方だ。テレビ業界に所属していたFROGMAN監督からこのような発言が飛び出したことに驚いた。
ネタは自分で生み出すもの
ふたりはどのようにして作品のネタを作っているのだろうか。
FROGMAN「新しいネタを求めて、雑誌読んだり、どっか行ったりするんですよ。だけど結局、雑誌を読んだら読むだけなんですよね(笑)。それで、締め切りに間に合わなくて、机でじっと考えてネタを出すという感じです。要は、ネタを作ろうという気持ちを作ることが大事なんだと思います」
青池監督もじっと考えるタイプという面ではFROGMAN監督と同様だが、考える前にある行動をとるという。
青池「僕も基本的には、じっとしてネタを考えるタイプなんですけど、その前にDVD屋に行って、ずっとパッケージの絵を観て話の内容を想像するんです。借りて観るとネタが被ってないのに被ったとか思ってしまいますので。それから家に帰って、じっと考えるタイプです」
今後の作品制作について
ふたりは、今後どのような作品を作っていくのだろうか?
青池「今すぐ作りたいのは短時間で作れる楽しい作品ですね。最近大規模な作品が多かったので。あとは、もし携帯電話でその作品を観たら携帯電話が汚れてイヤっていう位の、もの凄いホラー作品をやってみたいですね(笑)」
FROGMAN監督はなんと実写作品を撮るつもりのようだ。
FROGMAN「実写の長編映画のシナリオを来年は2~3本書いて、再来年に撮りたいなと思っています。作品内容は軽くて楽しい作品や、重く悲しい作品を考えています」
Flashでの制作が得意で今のスタイルになったのではなく、あくまでも表現したいものを一番簡単に表現できるツールがたまたまFlashだったという事を強調していたふたり。青池監督とFROGMAN監督は、作画が得意でないクリエイターでも、さまざまな要素をうまく組み合わせるセンスとアイディアさえあれば、良い作品が作れるということを、自身の作品で証明してみせた。Flashアニメという表現に固執しない両者が、さまざまなアイディアを、今後どのような形で作品にしていくのか、これからも注目したい。