古くからの音楽愛好家は成熟化

1980年代、巨大な人口を擁する中国で、当時からカセットテープでポピュラー音楽を聴いていたのは8,000万人程度といわれる。比較的早い時期から音楽を聴いていた彼らは、十数年の歳月の中で、独自の音楽鑑賞習慣を確立したのだった。その後、インターネットの発展が、より幅広い音楽鑑賞の選択肢を提供した。ポピュラー音楽以外に、ロックや民謡、ジャズなど、さまざまなジャンルの音楽が聴かれるようになってきた。

2007年の中国音楽界には、張懸、林一峰、蘇打緑、陳綺貞、自然巻、謝天笑、万暁利ら多数の「非主流」アーティストが現れた。彼らは、自らの音楽スタイルを打ち出し、多くのファンの心をつかんだ。これらのファンの多くは、早くからの音楽愛好家だった。

時の流れと共に音楽愛好家たちも成熟化。好きな音楽を選んで聴くことが習慣となり、市場の細分化がますます進んでいる。最新データによると、中国の携帯電話ユーザーはすでに5億人近くになり、PCユーザーはすでに2億人を超えたという。中国でも、いまは多くの人が携帯電話とPCを使って音楽作品を鑑賞しているが、安いMP3プレーヤーを購入し、タダで海賊版の音楽作品を享受しているユーザーも加えれば、その数はさらに増えるだろう。

にわか愛好家は「ネットワーク歌曲」好む

音楽を再生できる携帯電話端末や呼び出しメロディ、着メロのダウンロードは2003年から普及し始めたばかり。そのため、現在の音楽愛好者の6、7割は、音楽作品の購買や鑑賞を始めたばかりの層が多く、流行に左右されながら音楽を選ぶ段階にある。従って、リズムが単純で歌詞の覚えやすいものが、にわか音楽愛好家に気に入られることとなる。これらの音楽は、「ネットワーク歌曲」と呼ばれる。

前にも書いたように、中国音楽界全体にとり、2007年は「転換の年」だった。2008年はそれに一層の弾みがつく年となるはずだ。多くのアーティストが、ここ4年近くの上り調子を客観的に振り返り、多くのレコード会社はあらためて「コンテンツ第一」であると認識し直すことだろう。

また、3G時代の到来が、別の意味でデジタル音楽のコンテンツ生産を刺激し、多くの運営キャリアの加盟により、現状が改善されるはずだ。また、アップル、ノキアといった多国籍企業の中国デジタル音楽市場への浸透により、斬新なビジネスモデルや営利モデルが中国のデジタル音楽業界に新たな希望をもたらしてくれると期待したい。