もっとも、冷却設備自体にかかる電力消費量を減らしたり、移動にかかる燃料費・交通費そのものを削減したりしていくことは難しい。そこで、ITの潜在能力を有効に活用するというアプローチが求められることになる。鈴木氏は、その具体的な方法として、「建築物のグリーン化」「オフィス環境のグリーン化」「移動の削減」の3つの分野を挙げる。
実際、シスコでは、IPネットワークでITシステムと空調システムを連携させ、人がいる場合にのみ照明や冷却を稼働させる建物の建築を進めたり、無線LANとIP電話を活用していつどこにいても仕事ができるようなオフィス環境を整備したりしている。これらは、それぞれ「コネクテッド リアル エステート」、「コネクテッド・ワークプレイス」というコンセプトの下にグローバルで展開されているもので、エネルギー消費量の削減のほか、社員1人当たりのオフィス空間の約40%の削減、通勤に要する費用や時間の削減といった効果を上げているという。
取り組みやすさで言えば、これらファシリティ面でのグリーン化よりも、3つ目の移動の削減のほうが実行に移しやすいかもしれない。具体的には、電話会議やWeb会議を活用することで、移動にかかる時間やコスト、それにともなう環境負荷を減らすというものだ。特に、シスコは近年、ユニファイド・コミュニケーション戦略の一環として、オンライン・コラボレーションに力を入れており、Web会議やオンライン・イベント、eラーニングを開催するための製品群を強化している。
鈴木氏のWebセミナーも、SaaSで提供されるWeb会議サービス「WebEx」の機能を使って、無料セミナーとして開催されたものだ。WebExでは、映像や音声でのやりとりのほか、メッセージの送受信、ドキュメントやプレゼンテーションの共有、アプリケーションそのものの共有なども可能であるなど、現実により近いミーティング環境を提供できることが特徴となっている。
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シスコでは、世界214個所に設置された大画面のテレビ会議システム「TelePresence」を活用することで、年間1900万立方メートルのCO2削減、年間7000万ドル以上のコスト削減を実現しているという(2008年6月時点) |
また、アンケート結果をリアルタイムに集計し、参加者同士で情報を共有するといったITならではの機能も備える。移動による環境負荷の削減だけでなく、ITを活用した生産性の向上やワークスタイルの改善にもつながると言える。
鈴木氏は、「ITを有効活用することで可能になる温室効果ガスの削減量は、IT自体が排出する量を大幅に上回る」と指摘しながら、IT部門は、ITの有効活用を提案することで、環境問題の解決に積極的なリーダーシップを発揮すべきだと重ねて強調した。