ロンドンに拠点を置くクリエイティブ集団TOMATOに所属し、インターネット広告やコーポレートアイデンティティの分野で、様々なインタラクティブな作品を発表し活躍している長谷川踏太氏。長谷川氏の所属するTOMATOは、あのUnderworldのアートワークやミュージックビデオ、テレビ朝日のロゴ制作(音にシンクロしてロゴが変幻自在に形態を変化させるという斬新な作品)なども手掛けている。その長谷川氏がWeb Designing誌(小社刊)に長期連載している『モノサシに目印』が『コトバ/デザイン/アソビ』(小社刊)として、1冊にまとめられ刊行された。「文章主体でもなく、デザイン主体でもない」、「毎回レイアウトを変える」、「遊ぶ」などをキーワードに、連載企画としては異例のスタイルで展開されている長谷川氏の斬新な表現世界が堪能できる1冊だ。

イギリスより一時帰国し、10月14日に開催されるWeb Designing誌とクスール主催のイベント「dotFes2008 TOKYO」にも登場する長谷川氏が、自身の表現について語った。

長谷川踏太
1972年東京生まれ。1997年、英国王立美術大学大学院修士課程修了。ソニー株式会社デザインセンター勤務などを経て、2000年よりロンドンに拠点を置くクリエイティブ集団TOMATOに所属。インターネット広告やコーポレートアイデンティティなどの分野で、様々な作品を手掛ける。アーティストとして作品制作や文筆活動も行う。小社より『コトバ/デザイン/アソビ』を刊行

――『コトバ/デザイン/アソビ』には、紙媒体出身のデザイナーには思いつかないような、様々な斬新な構成のページがあります。

長谷川踏太(以下、長谷川)「あまり時間がなくて、短時間で考えてます。自分の室内やPCの中にあるものを素材にして考えています。冷蔵庫の中の食材で料理を一品作るという感じですね」

  ――紙媒体のお仕事は初めてとのことですが。

長谷川「ずっとデジタルで画面で動くものを作ってきたので、紙媒体の仕事はありませんでした。紙は、手に取ってみることができる感覚や、質感があるといった部分が全然違うので、意識してデザインしています。連載開始当時は、なかなか思い通りの発色で印刷できなくて、そこは試行錯誤しましたね」

――この企画自体がデザインに関する擬似的なワークショップのような印象もあります。

長谷川「正解のようなものを、あまり言い切らず、押し付けがましくしないようにしています」

――『読書感想文』ではなく『読書期待文』とか、企画自体がデザイナーの領域にとどまらず、かなりコンセプチャルなものが多いですね。

長谷川「僕が普段やっていること。書いてはいないんですが普段考えていることを、形にしたという例が多いですね。デザイナーが読む記事だからこそ、こういったものにしています。デザイナーや同業者自身が、もっと面白くなればいいと思うんです。ハウツーものというより、デザイナーとしての生き方とかのハウツーですね。美大などではあまり教えてもらえないことです。普通にデザイナーとして活動している人は、普通の人が思うデザイナーのイメージで仕事しているので、話していても、あまり面白くないんですよ。この本を読んで頭をほぐして、『好きにやっていいんだ』と思ってもらえたら、嬉しいです」

――どのような人にこの本を読んで欲しいですか?

長谷川「デザイン系の表現の職業の人に読んで欲しいですね。プロとプロになりたいという学生に。学生には、少し敷居が高い本かもしれないです。でも、デザイナーに憧れていたら、もう一枚、何かを剥かなくてはならないんです。この本でやっているのは、その剥く作業のことですからね」

コトバ/デザイン/アソビ

雑誌連載という形態としては、あり得ないほど斬新なページ構成で展開される長谷川氏の表現世界を集約。見開きページごとにセオリーなしの自由なスタイルでレイアウトされたテキストや画像、そしてユニークな企画自体が、読者の頭を解きほぐす。デザイナーはもちろん、デザイナーを目指す人も必読・必見・必感の1冊
毎日コミュケーションズ刊 2,520円