NTTデータは1日、最新のグリーン化技術を取り入れたデータセンターにより、高品質かつ低価格なIT基盤と運用を提供する「グリーンデータセンター 共通IT基盤サービス」を提供開始したと発表。データセンターを取り巻く最新動向や同製品に関する記者セミナーを開催した。
多くの課題を抱える現在のデータセンター
今回提供が開始された「グリーンデータセンター 共通IT基盤サービス」は、最新のグリーン化技術を取り入れたデータセンターにおいて、IT基盤を複数のシステムで共有し、高品質かつ低価格なIT基盤と運用を提供するというもの。建物設備やネットワーク、コンピューターなどのハード面だけでなく、OSやミドルウェアといったソフト面、IT基盤の運用保守までをも共有することができる。
執行役員 ビジネスソリューション事業本部長の神田文男氏 |
記者セミナーの前半では、執行役員 ビジネスソリューション事業本部長の神田文男氏が、現在のデータセンターを取り巻く実情について解説した。
データセンターが抱える問題点としては、事業継続性に重要な役割を担う「災害対策」をはじめ、コストへの影響が大きい「スペースの枯渇」や「電源容量不足」、環境負荷に関わる「サーバの発熱」や「運用負荷」、さらには「物理セキュリティ」や「拡張性」などが挙げられる。これらの課題を解決する方法としては、技術面で「仮想化」「高圧直流給電」「高効率空調システム」、運用面で「運用自動化」「災害対策」、利用面で「ユーティリティコンピューティング」「クラウドコンピューティング」、そしてすべての要素につながる「環境配慮」などへの取り組みが行われているという。
NTTデータによる技術面の具体的な取り組みとしてまず挙げられるのが、サーバの集約化と仮想化だ。同社では5月より複数部門サーバの集約化と仮想化を実施しており、従来の4拠点18サーバから1拠点3サーバにまで集約。仮想化環境への移行後も利用上での影響はなく、計画通りの集約効果を上げているという。さらに、今後は全社スタッフ部門サーバ82台の集約を実施、計算上では4台のサーバに集約できる予定だ。
神田氏は急増するデータセンターの消費電力に関しても言及し、過去の統計からその内訳は「冷却設備」が33%、「IT機器」が30%、「UPS(無停電電源装置)」が18%、「マシン室空調設備」が9%になっていると解説。IT機器とUPSで全体の48%を占めていることから、電力問題の解決に向けて、高圧直流給電が効果を発揮するという。
従来の交流給電方式では、入力されたAC電源をUPS内でバッテリへ蓄電するために一度DCへ変換し、出力時にACへと再変換、さらにIT機器の内部ではDCへと変換し使用されていた。1回の変換で約10%のロスが生じることから、3回の変換では約30%のロスとなる。一方の直流給電方式はUPS内のAC-DC変換1回でロスは約10%にまで低減、発熱量も少なくて済むというわけだ。
高圧直流給電システムに関するNTTデータの取り組みとしては、自社ビル内において380V高電圧直流給電(HVDC給電)方式をコアとした「オールインワン型サーバラック・ユニットシステム」を検証中。投資コストの大幅な削減、省エネ効果、スペース効率の向上、信頼性の向上、増設・メンテナンス性の向上といった数多くのメリットを有しており、今後は部門サーバへのHVDC給電を順次拡大していく予定だという。「高圧直流は電源を切る際に火花が発生する可能性があるため、いかに安全性を確保していくかがポイントです」(神田氏)
データセンターの冷却にかかる消費電力に関しては、前述の統計から「冷却設備」と「マシン室空調設備」で合計42%もの電力を消費している。従来のデータセンターでは冷気と暖機が混ざったり、コールドアイル側に暖気が回り込む「ショートサーキット」が発生したりと、冷却効率が悪化している状況。また、床下では空気の流れが配線により遮られ、本来の空調機能が十分に発揮できていないこともある。そのIT機器負荷容量は1ラックあたり2-3kVAで、具体的には1Uサーバが10台と15インチモニタが1台程度になる換算だ。
そこで今後のデータセンターでは、効率的な気流を実現する「天井・二重床設計」、熱源近傍での熱処理を行う「タスク&アンビエント空調」、暖気と冷気を完全に分離する「キャッピング」、配線の見直しにより気流効率を向上する「ケーブリング」、見える化により最適環境の検証を行う「気流解析」などが重要となる。こうした取り組みにより、IT機器負荷容量は1ラックあたり6-8kVAまで向上が見込めるという。
さらに神田氏は、グリーンデータセンターによるCO2削減効果についても解説した。太陽光発電システム、高圧直流給電、仮想化、高効率空調設計、高効率ラック設計などの最新技術を採用することで、NTTデータが保有する都内データセンターの1期分(約1200平米)で年間約2000トンのCO2削減が可能。これは東京ドーム21個分の森林保護に相当し、同社の従来型iDCサービスと比べて30%以上の削減効果が期待できるという。
共有利用により価格は最大30%オフを実現
ビジネスソリューション事業本部 データセンタービジネスユニット長の年清昭彦氏 |
続いてビジネスソリューション事業本部 データセンタービジネスユニット長の年清昭彦氏が、グリーンデータセンター 共通IT基盤サービスの詳細について解説した。共通IT基盤サービスは、データセンターに必要な3つの要素「最新ITの導入による攻めの経営の実現」「コーポレートガバナンスの実現」「IT活用に付随して生じる課題の解決」を兼ね備えており、前述のデータセンターが抱える課題を解決してくれるという。
共通IT基盤サービスが持つ特徴は大きく4つ。まず、従来のデータセンターがファシリティ、ネットワーク、ハードウェアをサービス提供範囲としていたのに対し、今回のサービスでは「標準ITプラットフォームの提供」としてOSやミドルウェアも提供される。これにより、ユーザーは安定したIT基盤を利用可能で、業務アプリケーション領域にリソースが集中できるようになるという。
次に、同社が提供しているオープンソース系の「Prossione」および、マルチベンダ系の「PRORIZE」というソリューションが採用されている点だ。「オープンソース系とマルチベンダ系の2本立」を図ることで、ニーズに応じた選択が可能となっている。また「仮想化技術によるシステムの最適化」ではハードウェアを効率的に利用し、サーバの集約化・増減要求へのフレキシブルな対応が可能。より価格競争力のあるサービス提供が行える。さらに、市場ニーズの高い環境への配慮として「徹底した省エネでグリーンITを実現」という部分も、企業にとっては大きなメリットとなるだろう。
サービス体系は企業のニーズに応じて、ファシリティから仮想化までを共有利用する小規模向けの「マネージド・ホスティング ハード共有」、ファシリティ部分のみを共有利用する小-中規模向けの「マネージド・ホスティング ハード専有」、小-大規模向けの「個別カスタマイズ」という3種類のメニューから選択することが可能。価格については従来iDC価格と比較してハード共有が最大30%オフ、ハード専有が10%以上オフ、個別カスタマイズが同程度になるという。
なお、現在のところ60社程度の引き合いがあり、その多くはハード共有を希望。同社では公共、金融、法人分野を中心に今後3年間で導入企業200社以上の獲得を目指すという。